中部大学教育研究12
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言実行創立者、夢の軌跡」の一部分を視聴した第13回授業の後の「感想・質問カード」には、以下のような感想が見られた。中部大学の創立者のことがよくわかったし、この人の努力はとてもすごいと思いました」(生命健康科学部、1年生、男性)不言実行、あてになる人間。この建学の精神のような人間になるぞ~。(生命健康科学部、1年生、女性)次に、これらの映像視聴の効果について、アンケート調査の結果をもとに見てみよう。9本の自校に関する映像を視聴したことで、前述した5つの質問について、「とても深まった」「やや深まった」を合計すると、下記のようになった。問1教育・研究の特徴や長所への理解……76.7%問2自校への愛校心……53.4%問3やる気や学習意欲……51.4%問4自校の目的・理念への理解……49.5%問5自校の歴史への理解……66.0%以上のように、項目によるばらつきはあるものの、とくに「問1自校の教育・研究の特徴や長所への理解」では76.7%、「問5自校の歴史への理解」では66.0%の学生が「深まった」と答えている。これらのことから、自校に関する映像視聴は、自校教育に一定の効果があると結論づけることができるだろう。4.2自校教育における映像内容別の効果では次に、問1から問5のそれぞれの項目について、学生たちが最も役にたったと考えた映像はどのようなものだろうか。アンケートでは、問6として、「問6-1自校の教育・研究の特徴や長所への理解」「問6-2自校への愛校心」「問6-3やる気や学習意欲」、「問6-4自校の目的・理念への理解」「問6-5自校の歴史への理解」のそれぞれについて、①~⑨のうちどの映像が役にたったかを聞いた。その結果、「問6-1自校の教育・研究の特徴や長所への理解」には、③『ほっとイブニング』(NHK、2012年5月21日放送、工学部・H先生、居眠り運転防止システムを開発)をあげた学生が33.4%と最も多かった。「問6-2自校への愛校心の向上」には、⑨『情熱大陸』(TBS、2011年7月24日放送、総合工学研究所・T先生)をあげた学生が16.5%と最も多かった。「問6-3やる気や学習意欲の向上」には、①『あげテン』(東海テレビ、2012年4月6日放送、人文学部卒業生が番組のアシスタントディレクターとして活躍)をあげた学生が15.0%と最も多くかった。「問6-4自校の目的・理念の理解」と「問6-5自校の歴史への理解」では、⑧『不言実行創立者、夢の軌跡』(中部大学紹介ビデオ、2008年改訂版)をあげた学生がそれぞれ41.7%、61.2%と最も多かった。これらの結果から、「自校の目的・理念の理解」や「自校の歴史」については、大学が独自に制作した映像が効果的である一方で、「自校の教育・研究の特徴や長所」「愛校心の向上」「自分自身のやる気や学習意欲の向上」には、テレビで放送された映像が効果的であることがわかる。では、なぜこれらのテレビ映像が効果的なのだろうか。4.3なぜ自校に関するテレビ映像は、「自校の教育・研究の理解」「愛校心の向上」「やる気や学習意欲の向上」に効果があるのか学生たちは、日々、中部大学で学生生活をおくっている。しかし、中部大学から約250キロ離れた東京のテレビ局から、そして約15キロはなれた名古屋市中心部のテレビ局からの映像によって、自分の大学の教育・研究について理解したり、愛校心を向上させたり、学習意欲を向上させたりしている。これはなぜだろうか。Boorstin(1962)は、メディアによって提示される世界を「擬似イベント」と呼び、そこで提示される世界を、「現実そのものよりも、よりいきいきと、より魅力的で、より印象深く、より説得力をもつ」としている。例えば、愛知県に住む私たちは、実際に目の前で起きているできごとそのものよりも、メディアが提示する愛知県内のできごとをより魅力的で、より印象深く、より説得力をもつものとして受け取るのである。これと同じように、大学生たちも、自分たちの大学内で起きているできごとそのものよりも、メディアが提示する大学に関するできごとを、より魅力的で、より印象深く、より説得力をもつものとして受け止めているのではないだろうか。さらに、小川(2009)が「私たちは、メディアによってステレオタイプ化されたイメージを無意識のうちに頭の中に蓄積させて理解させたつもりになっている」と言うように、私たちは、世界で起きている無数の事象の中で、マス・メディアが選択し提示したイメージによって世界を認識しているのである。とするならば、学生たちも、マス・メディアが選択し、提示したイメージによって自らの大学について認識しているのではないだろうか。つまり、学生たちは、マス・メディアが自分の大学を取り上げていることで、「自分の大学が―79―自校に関するテレビ映像視聴の「自校教育」への効果

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