中部大学教育研究12
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2011~2012年の間に行われた3回の日本語検定の受検状況を踏まえると、今後の課題として以下のような点が挙げられる。・「日本語検定」が学内で受けられるということが周知されつつあり、受検者は回を追うごとに増えている。「日本語検定」受検は資格を取得するというだけでなく、これを目標として大学生・社会人に必要な日本語の知識を身につける良い機会である。今後も「日本語検定」を具体的な目標として日本語力の向上に努めてもらうよう、教員側も学習の動機付けを行っていくことが必要であろう。・試験の難易度に左右されない、しっかりとした基礎力を身につけることを目指す。・「日本語スキルA」で特に取り上げている領域「敬語」「文法」に関しては、はっきりとした教育効果が見られた。他の領域、特に苦手意識を持つ学生が多い「表記」「漢字」について、限られた授業時間の中で小テスト以外の有効な手だてを織り込むことができないか検討する必要がある。4学生の声授業目標の設定、シラバスの見直しなど、これまで学生のニーズとレベルに適した内容を目指してきた。では、実際に「日本語スキルA」を受講した学生はどのように感じているのか。学生の感想の中から、典型的なものを以下に列挙する。・まさか大学で敬語や文法の勉強をするとは思っておらず、なぜするのかと思ったが、全然知らないことを学べてよかった。・規則性に従えば、苦手だった敬語も「ら抜き言葉」も理解でき、間違った使い方が減った。・今まで使っていた敬語は間違いだらけだったとわかった。社会に出てからきっと役立つと思う。・スピーチは緊張したが、その前にグループでの意見交換や発表練習があったのでよかった。・スピーチをすることよりも、スピーチを聞いて適確な質問をする方が難しいことに気づいた。・初めて小論文で800字以上書けるようになって嬉しかった。・文章を書く楽しさを知った。・作文もスピーチも苦手だったので、講義を受けるのが嫌だった。しかし、作文の書き方やスピーチの工夫などがわかりやすく説明されたので、自信を持って書くことも意見を言うこともでき、苦手意識が克服できた。5まとめと今後の課題以上のように、日本語スキルは立ち上げから1年半が経過し、授業運営や日本語検定の実施が軌道に乗ってきたと言える。しかし、「日本語スキルA」の授業内容の点検と改善、ならびに出版したばかりのオリジナル教科書の改善、受検者数に応じた日本語検定の円滑な実施など、まだ基本的な問題で定期的に検討を加えなくてはならないことが多い。今後も受講者の様子をよく観察・分析して、よりよい態勢づくりを目指していきたい。謝辞日本語スキル兼担の先生方、非常勤講師の各先生方の積極的なご提案・ご協力により、「日本語スキルA」の立ち上げと日々の授業の運営が円滑に進み、このような実践報告が可能となりました。厚くお礼申し上げます。注1)日本語スキルWGは、日本語教育センター、現代教育学部、人文学部、アドミッション戦略室の専任教員で構成された。WGのメンバーは「中部大学日本語スキル研究会」として『日本語スキル』を執筆し、兼担として「日本語スキルA」の授業を担当している。2)受検者の多い学科に関しては、当日の試験監督者のご協力をいただいている。日本語検定の申し込み手続きはキャリアセンター、監督者の選出等運営に関わること・検定問題の再配布は各学部事務室にお願いしており、2年目からは現代教育学部共通教育科共通室に事務作業全般を引き受けていただいている。准教授現代教育学部共通教育科寺井一准教授現代教育学部共通教育科生田裕子―75―「日本語スキルA」1年目・2年目の実践報告

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