中部大学教育研究12
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2.2日本語検定との関連日本語検定は「敬語」「文法」「語彙」「言葉の意味」「表記」「漢字」の6領域から出題される。しかし、3つの柱を定めた「日本語スキルA」の授業の中でその全てを扱うのは難しい。そこで、「敬語」「文法」の2領域のみを授業で扱うことにした。この2つの領域は言語学的な理論が込み入った領域であり、学生の自学自習が難しい。よって、授業で解説と練習を行うのが効果的だと判断したからである。また、日本語検定の有無に拘らず、この2領域は社会人として生活する上で必要とされることは明らかであり、学生の要求度も高いものであろうと考えた。また、残りの4領域については、「語彙」「漢字」など記憶に頼る要素の強い領域であるため、毎時間小テストを行って知識の定着を図ることとした。学生は小テスト用のテキストを購入し、毎回指定された小テストの範囲を自学自習する。具体的な学習計画については2.4で述べる。2.3教科書の作成「日本語スキルA」で学ぶ内容を全クラスである程度統一するためには、それを具体的に示したテキストが必要である。1年目には、WGがオリジナルで作成したものを印刷し、冊子の形にして学生に配布した。2年目は、1年目の経験を踏まえてそれを改訂し、『日本語スキル』(中部大学日本語スキル研究会著、学術図書刊)として出版し、教科書とした。各章が1回分の授業の内容に相当するように編集し、巻末には日本語検定3級の問題(1回分)と提出用の原稿用紙・課題シートなどを付けた。この教科書は、小テスト用のテキスト『社会人のための日本語トレーニング』(日本語検定委員会監修、エデュケーショナルネットワーク刊)とともに全クラスで共通使用している。2.4授業計画と主な内容表1に平成24年度の授業計画・小テスト実施範囲を掲げる。学期の前半で「日本語の基礎知識(検定対策)」、後半で「書くこと」「話すこと」を扱う。授業の進め方は、前半の授業(敬語・文法)に関しては、テキストに沿って説明し練習問題をその場で行い解答解説をしていく方法が基本である。後半の「書くこと」「話すこと」は、図1(次ページ)のように同一のテーマで連動させて、それぞれのスキルアップを図っているのが特徴である。この方法で、1年目も2年目も、受講したほとんどの学生が800字程度の小論文を自力で書き、一度は人前に出てきちんと自分の考えを話す経験を積むことができた。2.5小テスト日本語検定は年2回、6月中旬と11月中旬頃に実施される。授業で扱わない4領域については、検定までに網羅できるように小テストの計画を立てた。小テストは、授業の初めの約5分間で行っている。こうすることで、学生に時間通り授業に来ることを促す効果も狙っている。特に1・2時限目開講の場合、遅刻をすると小テストが受けられず必然的に成績に影響することになるため、学生には注意を促している。―72―寺井一・生田裕子表1授業計画

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