中部大学教育研究12
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1はじめに体育系クラブの強化は大学の活性化に重要な要素であり、そのための科学的サポート(医療・トレーニングおよびコンディショニング・メンタル・栄養など)は、近年その必要性が高まっている。スポーツ科学の先進国といえる米国においては30年以上も前から、大学内スポーツ活動の科学的サポート体制として、大規模なトレーニングルームの設置やトレーニング指導などを専門とするストレングスコーチ、傷害のケアなどを専門とするアスレティックトレーナー等、専門のスタッフが配置され、競技力向上や傷害予防に多大な成果を上げている。また、スポーツ科学等の関連分野で学ぶ学生がサポートスタッフとして活動しており、実践的教育機関としての役割を果たしている。国内の大学においても、大学内におけるサポート体制を組織的かつ専門的に組織し、体育系クラブ強化への大きな力となっている。また、関連分野で学ぶ学生の貴重な実践の場となっている事例も多い。以下に、2011年11月に実態調査を行った2大学を例に挙げる。東海大学では1996年より体力強化及びメディカル(治療・リハビリテーション等)・メンタルトレーニング・栄養の部門において、学生スタッフによる体育系クラブのサポートを実施している。各部門には専任教員を置き、学生スタッフの教育・指導を行っている。2010年の時点でおよそ120名の学生スタッフが活動し、運動部強化に貢献し、かつ学生スタッフの実践的教育の場となっている。また、高校生対象の体験セミナーの実施、地域及び系列高校の部活動・スポーツイベントへの学生スタッフの派遣など、学生募集や地域貢献の一助となっている。国際武道大学では1985年、専属アスレティックトレーナーの活動からスタートし、興味を持つ学生が徐々に参加する形で、クラブサポートサークルという形へ発展している。現在はサポートサークルの学生スタッフにより全学生対象の体力測定の計画・実施・評価が実施されているほか、学内の体育系クラブのトレーニング指導、メディカルケアが行われている。また、サッカーのJリーグやバレーボールのVリーグチーム対象の体力測定評価、トレーニング指導等も行っている。現在、中部大学には33の体育系クラブがあり、活発な活動が行われているが、科学的サポートは部単位のものにとどまり、学内での計画的・組織的なサポートは行われているとは言い難い。そのため、選手として活動する学生の本来の能力を発揮できないケースも多いと考えられる。本稿では中部大学における体育系クラブの指導やサポートに関するアンケート調査の結果から、その現状とサポートの必要性について考察する。2方法2012年1月に各クラブ代表者に質問紙を1部ずつ配布し、留置き調査法にて実施した。その結果、33団体の体育系クラブより回答を得た。質問項目は、部活動の人数や活動頻度等についての質問項目に加え、指導者に関する質問項目、サポートに対する意識についての項目を作成した。指導者に対する質問項目では、指導者の人数や「ケガのケア」「トレーニング指導」「栄養指導」の3つの側面から、それぞれのサポートスタッフの有無についての質問項目を設定した。また、3つの側面からの専門の勉強会に対して、クラブ全体もしくはクラブ代表者が参加したいと思うかについての質問項目を設定した。3結果3.1体育系クラブの状況中部大学における体育系クラブの状況として、約950名の学生が在籍していることが明らかになった。各クラブの所属人数は7名から100名までの回答があり、平均所属人数は28.7名(SD=20.76)であった。また、実際の活動人数は1名から88名までの回答があった。平均活動人数は19.0名(SD=16.18)であった。1週間の活動日数は、1日が2団体(6.1%)、2日が4団体(12.1%)、3日が8団体(24.2%)、4日が6団体(18.2%)、5日が7団体(21.2%)、6日が4団体(12.1%)、7日は1団体(3.0%)で未回答が1団体であった(図1)。また、1週間の平均練習日数は3.9日(SD=1.54)であった。―67―中部大学教育研究№12(2012)67-70中部大学体育系クラブにおけるサポート体制に関する報告飯尾洋子・西垣景太

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