中部大学教育研究12
74/140

行われた(早矢仕・太田、2009)。創設5年目となる2012年度に、児童教育学科では教育課程の大幅な変更が行われ、それに伴って「スタートアップセミナー」の具体的達成目標及びシラバスも改訂された。2012年度に改訂された児童教育学科の「スタートアップセミナー」の授業の趣旨と具体的目標は、本学の初年次教育としての「スタートアップセミナー」のねらいを核としながら学科独自の課題を加えたものである。すなわち、本学の一員としての帰属意識を高め、建学の精神に沿った人間育成を行うと同時に、児童教育学科の教育目標に対する理解を深めさせること、そのための活動をとおして、学生相互の人間関係を強め、有意義で健康的な学生生活を送るために必要な基礎的・実践的な習慣や態度を熟成することである。1.4児童教育学科の「スタートアップセミナー」の内容児童教育学科の「スタートアップセミナー」の授業内容には以下のような4つの柱があり、これらを含めてシラバスが作成された。1建学の精神、基本理念にかかわる活動2学生生活のライフプラン・キャリアプラン3学びのスキル4児童教育学科の特性理解これらの目的と内容を要約すると、「1.建学の精神、基本理念にかかわる活動」とは、建学の精神を理解しそれを体現するための活動である。学生は建学の精神「あてになる人間の育成」についての講話を聴く。そしてこれを具体的に実践する試みとして、在籍4年間にわたり継続して行うことができる社会貢献活動(ボランティア活動など)をプランニングして実施する。授業時間内にはプランの作成と検討(簡単な報告)を行い、実際の活動は空き時間や休業日などを利用して実施していく。「2.学生生活のライフプラン・キャリアプラン」の目的は、学生がポジティブな自己理解を深め、将来の夢へのプランニングや今後取り組むべき課題を明らかにすることである。内容は、3回に分けて自己理解や今後の課題に関する400字の作文を3回、共に推敲しながら完成させる。これを「私400」と名付けた。また基礎学力を確認することも目的である。「3.学びのスキル」では、社会環境に関する理解の促進とプレゼンテーション技術の向上を目指す。そのため、社会的なテーマについて2~3人のグループで調べて、グループ対抗のディベイトを行う。「4.児童教育学科の特性理解」では、学生一人あたり2~3人の学科教員の研究室を複数の学生とともに訪問して、教員との対話を通してその専門分野について聞き取り、これを各チームに持ち帰り報告しあう。また「学習指導要領学習会」として学習指導要領の音読や要約を行い、小学校ではどのような教科・領域で何を学ぶのかを概観する。この2種類の活動を通して学科の学びの特徴を理解し、3年時のゼミ選定の資料とする。なお、実際の授業を進めるにあたっては、本授業の趣旨と目標を効果的に実現するために主に次のような方法を取り入れた。①新入生100名を6チーム(各約15名)に分け、各チームに全専任教員を2,3名ずつ配属した。1人が主に担当し、残りの教員がこれを補助した。授業は一回90分で15回。使用教室は演習室。②主担当教員は、学科で作成した統一シラバスと<教員マニュアル>の冊子に基づいて授業を進行させ、必要に応じて補助の教員がサポートする。各チームの主担当教員6名はマニュアル実施にあたって適宜打ち合わせの時間をもった。③各回の授業内容は学科で決めた統一シラバスをもとに主担当教員がリードするが、チームの具体的活動は学生委員を決めて学生を中心に進めた。④90分の授業時間のなかでの各活動の割り振りは、導入のアイスブレイキング(主に部屋の美化活動)に続いて各活動(プログラム)を2~3種、それぞれ10分から20分程度行う。最後に次回の予告を行った。⑤各活動を展開するにあたっては、学生同士が相互交流するよう発表や報告の機会をもった。⑥2つの活動において、チーム間で点数を競うゲーム的な要素を取り入れ、授業への動機づけやチーム意識が高まるよう配慮した。授業の最終回は「成果発表会」とし、優秀チームや作文の優秀作品を発表、賞揚した。⑦主担当教員間で連絡を密にし、各チームの授業内容および進度がほぼ同じになるよう配慮した。1.5本研究の目的2012年度に改訂されたシラバスと新しい方法によって実施された児童教育学科の「スタートアップセミナー」は、受講した学生たちに実際にどのように受け止められたのだろうか。授業の新たな計画や実施に参画した筆者らにとって、学生たちがこの授業で何を学んだのか、この学びが以後の大学生活にどうつながるのかを明確にしたいところである。そこで本研究では、2012年度4月からの15回の授業の、学生にとっての意味を検証する。それによって、次年度以降の児童教育学科の「スタートアップセミナー」の内容や実施方法等を改善する資料を得たいと考える。―60―吉田直子・古市真智子・味岡ゆい・長尾寛子

元のページ  ../index.html#74

このブックを見る