中部大学教育研究12
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ジがたった1日の開催であること、1つのプログラムにおいて得られたデータのみを扱っていることが挙げられる。そのため、本研究の結果を過度に一般化して理解することは難しいかもしれない。ただし、障がい者スポーツへのイメージならびに障がい者へのイメージは、企画の前よりも後の方が有意に肯定的なイメージへと変化していることが明らかになったことで、本研究は重要な示唆を含んでいると考えられるが、課題も多い。積極的かつ自発的な行動やコミュニケーション力は、社会人として求められる「社会人基礎力」に含まれている。今回のイベントにスタッフとして参加した学生のコミュニケーション有能感や障がい者へのイメージが肯定的に変化したことを「社会人基礎力」が身に付いたと考えるならば、今回のイベントは大学教育としての役割を果たせたのではないだろうか。さらに、これらの活動が大学での学修と繋がるようにプログラムする必要があると考える。5まとめ中部大学にて開催された障がい者スポーツイベントのスポ・レクチャレンジにスタッフとして参加した学生を対象に、障がい者スポーツや障がい者に対するイメージが企画の前後で肯定的に変化するか、また、積極的なコミュニケーションの機会によって、コミュニケーションの有能感が変化するかを検討した。その結果、障がい者スポーツならびに障がい者に対するイメージは、企画前よりも企画後の方が肯定的なイメージに変化していた。今までに障がいのある人と直接触れ合う経験がないことから、勝手に否定的なイメージを抱いており、直接触れ合うことで障がいのある人を理解することにつながり、肯定的なイメージに変化したと考えられる。また、自ら積極的にコミュニケーションをはかる機会からコミュニケーションの有能感にも変化が見られた。企画後の方が4因子の得点が向上していたが、有意な変化が認められた因子は、「社交性因子」と「自己表現因子」で、どちらも自発的なコミュニケーションに影響する要因であった。今回のイベントに参加した学生たちが、今後の学生生活の中で様々な人と触れ合い、自発的なコミュニケーション能力や相手を思いやる心を育むことができるよう今後も多様な経験や継続的な経験が必要だと考える。大学を取り巻く環境や大学の社会貢献に対する意識が変わり、学生のボランティア活動を大学の教育プログラムとして認めようとする動きが広がり始めている。大切なことは、ボランティアに参加したことが認められれば単位を付与するというものではなく、ボランティア活動が、学生の人間的成長を意図した教育活動として意義を持つプログラムづくりにあると考える。本研究を基に、日常生活では得られない一つ一つの経験が人間性を豊かにするプログラムを考えたい。引用・参考文献・川間健之介(1996)障害をもつ人に対する態度-研究の現状と課題-.特殊教育学研究,34(2),59-68.・松本耕二・田引俊和(2009)障害者スポーツをささえるボランティアからみた知的障がい者のイメージと日常生活における意識・態度.山口県立大学学術情報(社会福祉学部紀要),2,27-38.・松村孝雄・横川剛毅(2002)知的障害者のイメージとその規定要因.東海大学紀要,第77輯,101-109.・齋藤まゆみ(2008)A県小学校における障害のある児童の体育実施状況.スポーツ教育学研究,27(2),73-81.・田中淳子・須河内貢(2004)知的障害者に対する援助経験による態度変容に関する基礎的研究.岡山大学・岡山短期大学紀要,27,59-67.・山内隆久(1996)偏見解消の心理-対人接触による障害者の理解-.ナカニシヤ出版.京都.・吉岡尚美・内田匡輔(2008)障害のある人と「障害者スポーツ」に対する体育学部生の認識の変化に関する調査-「障害者スポーツ演習」の試みと効果-.東海大学紀要体育学部,第37号,21-27.・吉岡尚美・内田匡輔(2010)体育学部生の障害のある人とスポーツに対する変化について-第2報-.東海大学紀要体育学部,第39号,69-74.―58―西垣景太・上田ゆみ子・藤丸郁代・伊藤守弘助教生命健康科学部スポーツ保健医療学科西垣景太助手看護実習センター上田ゆみ子講師生命健康科学部スポーツ保健医療学科藤丸郁代准教授生命健康科学部生命医科学科伊藤守弘

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