中部大学教育研究12
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12345く、その他9項目は企画前よりも企画後が有意に肯定的なイメージに変化していることが明らかになった。有意な変化が認められなかった項目も平均値として高くなっているため、障がい者へのイメージは全体的に肯定的イメージへと変化していると考えられる(表2)。表2障がい者に対するイメージの得点変化3.3コミュニケーションの有能感の変化コミュニケーションの有能感を測定した4因子では、企画の前後ですべての得点が向上していた。事前と事後においてt検定を行った。その結果、自ら積極的に人と関わり明るい雰囲気を作っていく行動特徴に関する内容の「社交性因子」(t=-2.55,自由度=28,p<.02)と、コミュニケーションの送り手として考えや感情を表現できるかどうかに関する内容の「自己表現因子」(t=-2.24,自由度=28,p<.03)が有意に向上していることが認められた。また、コミュニケーションの有能感を示す総合得点においても有意(t=-2.77,自由度=28,p<.01)に向上していることが明らかになった。一方、相手の気持ちや周囲の状況に意識を向けることに関する内容の「相手志向性因子」と傾聴の姿勢を表す内容の「傾聴因子」の得点は向上したものの、有意な差は認められなかった(表3)。表3コミュニケーションの有能感各因子の得点変化4考察障がい者スポーツへのイメージならびに障がい者へのイメージは、企画の前よりも後の方が有意に肯定的なイメージへと変化していることが明らかになった。有意に変化しなかった項目は事前調査の段階ですでに肯定的な回答結果が得られていたことから、それ以上の変化は認められなかったものと考えられる。障がい者に対する偏見は、直接的な接触の機会が少ないことから「わからないから不安を抱く」状況が発生していると考えられる。今回の企画において、授業内での情報提示のみならず、1日という短い時間ではあるが、直接的な触れ合いを通したことで肯定的なものへと変化したものと考えられ、先行研究を支持する結果となった。しかし、今回の調査対象者は、自ら企画のスタッフとして参加したいと望んだ学生が多かったため、企画前の段階からあまり否定的なイメージを抱いてはいなかった。今後、授業や企画に参加していない学生が持つイメージとの比較検討も必要だと考える。コミュニケーションの有能感に関する尺度では、企画前よりも後の方が「社交性因子」と「自己表現因子」の得点が有意に向上し、「相手志向性因子」と「傾聴因子」の得点は向上したものの有意な差は認められなかった。これらの結果から、今回の企画を経験したことによって、自発的なコミュニケーションに関する有能感が向上したと考えられる。回答者の感想からは、「障がい者の方とコミュニケーションをとることに対して始めはとても自信なかったし緊張していたけど笑顔で接してみたら思ったよりも全然簡単にコミュニケーションがとることができて、とても楽しかった。」「自分が伝えたいことを手のひらで書いてしか伝えることができなくて最初すごくとまどったけど段々伝えることができてとてもうれしかった。」などもあった。聴覚障がいの参加者の方も多かったため、学生は自ら筆談や手話を覚えながら積極的にコミュニケーションを図る必要性を認識することで、自発的なコミュニケーションに関する有能感が向上したと考える。また、障がい者スポーツや障がい者に対するイメージが肯定的に変化することによって、対象に関心を持つことになり、その結果コミュニケーションをとる意欲の向上につながると考える。本研究においては、スポレクチャレンジの企画を通しての変化を検討したが、高齢者や子どもなど他の企画においてもスタッフとして参加することは、積極的かつ自発的な行動が求められるため、コミュニケーションの有能感が向上すると考えられる。本調査からは、障がい者スポーツの企画において障がいのある人と触れ合うことによる特異的な変化を明らかにすることはできなかった。また、対象としたスポ・レクチャレン―57―障がい者スポーツイベントの学生への教育的効果

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