中部大学教育研究12
67/140

う視点からみると共通点がさらに認められる。事例Aは入職当初、穿刺業務の大変さと患者とのコミュニケーションの難しさを挙げているが、一年後には、穿刺業務を患者から褒められたり、コミュニケーションの楽しさを語ったりしている。事例Bは入職後ペースメーカ業務についての業務拡大を提案するも採用されなかったり、業務改善案の立案と試験運用開始後にクレームがついたり、順調とは言えない経験をして、一年後には更なる改善案を提出し採用されている。またOpe室の機器運営管理を任され運営案の運用が軌道に乗ってきたことを嬉しいと語っている。両者とも、1年目にできなかったことが職場内で指導を受けながら業務に取り組むことで、2年目には出来るようになっている。就職直後の困難さやマイナス体験をプラスに変えたことで新人時期の自身の課題を乗り越えたことがうかがえ、これは順調な職場適応の一因と考えることができると思われる。事例A・Bとも1年目の課題を克服したといえるが、現在事例Aは他職種との人間関係の間での立場の難しさを、事例Bは患者と接する臨床業務を望んではいるものの経験不足と知識不足を感じている。2年目になっての新たな課題に直面し、職場適応も次のステップに移ったといえよう。7おわりに2事例において、質的研究手法を用い、臨床現場の業務についての語りが多かった事例を分析し、臨床工学技士の育成について検討した。2事例とも臨床現場での知識不足を痛感したことに対し、学校時代に基礎知識を確実に身に付けておけばよかったと感じている。また、臨床現場と学校教育の差を感じているが、実際に患者との関わりが極めて少ない学校教育の限界など、学校教育との違いを認識していることも把握できた。この結果は学校教育との違いが表面化した具体例であり、質的研究手法の特質と重要性が確認でき、問題探索型の研究成果を得た。今後の課題としては、事例を重ねて問題探索し、学校教育における円滑な職場適応への対策について検討を深めていきたい。参考文献1)米澤久幸他,臨床適応力を高めるカリキュラムと臨床実習のあり方研究,中部大学生命健康科学研究所紀要,Vol.6,2010年3月2)戈木クレイグヒル滋子,グラウンデッド・セオリー・アプローチ,p27-41,新曜社,2006年3)福田信吾他,新卒医療専門職から見た学校教育の問題,中部大学教育研究,No.11,2011年12月講師生命健康科学部臨床工学科武田明講師生命健康科学部臨床工学科福田信吾教授生命健康科学部理学療法学科米澤久幸講師医療技術実習センター宮本靖義講師医療技術実習センター矢澤浩成作業療法士長国立病院機構東尾張病院藤部百代―53―職場適応からみた学校教育の検討

元のページ  ../index.html#67

このブックを見る