中部大学教育研究12
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DrNsDrNsCEを担当している、「就職後」では、患者に対して脱血・返血するための穿刺業務を行い、「業務の困難さ」として穿刺業務が大変であると語っている。就職当初は、患者の症状を見る余裕がなく、話しかけても応対してもらえない患者がおり、非常に業務がやり難かった。また、穿刺の失敗により患者から穿刺を拒否されたり、新人を全く受け入れてもらえない患者もいたが、しょうがないと思い落ち込まず、そのような時は先輩スタッフと相談して「患者のところにはいかないほうがいい」とアドバイスを貰った。患者とのコミュニケーションの難しさを感じていたが、一年が経つ頃になると、穿刺業務を患者から褒められたり、黙っていると患者から話しかけてくれたりと励まされることがありコミュニケーションの楽しさ等の語りが多くみられた。人間関係においては、臨床工学技士同士の関係は良好である一方、看護師と看護助手間の人間関係がギクシャクしており、臨床工学技士が看護師や看護助手の愚痴の聞き役になり仲介役もしている。自分はまだ愚痴を聞くだけで仲介役になっていない。「学校」については、臨床実習後に授業があったほうが良いとの希望があり、実際に経験してからもう一度講義を受けた方がより理解が深まるとの要望もあった。見学中心の臨床実習においても直接患者と接することができないことの限界を認識しており、実習地への教員サポートは、「誰も知らないところで心細かったが先生の顔を見ると安心するので良かった」などサポート回数を増やしてほしい,という要望もあったが、学校教育に求める内容は多く語られなかった。5.2事例B同じ部署の臨床工学技士は12名、同期入職が4名おり平均年齢は35歳である。部署の業務内容としては、1,200台の輸液ポンプ管理をはじめ機器全般を集中管理している機器管理室や透析室・Ope室・ICUなどがあるが、業務のローテーションは無い。図2は、Bを図式化したものである。Bにおいては、総合病院に勤務し、機器管理業務が中心で患者と接する臨床業務は少ない、「就職後」では、人間関係は良好で、特に同期入職の臨床工学技士4人とは良好な関係である。他職種との接点は少ないが医師・看護師とのコミュニケーションは良好である。「ペースメーカ業務は臨床工学技士の業務ではないか」と上司に提案するも、臨床工学技士の人員数の問題で、「今はペースメーカ業務を行うのは無理」と言われたことなど、全体的な臨床に関わる業務拡大を提案するも採用されなかった。また、機器管理業務の改善案を立て、試験運用を始めたら、看護師から「緊急性を考えていない」と、クレームがついた。そこで、緊急性を考えた機器管理業務の改善案を提出し、無事に採用され今の業務に反映されている。一年が経つ頃になると、Ope室の機器運営管理も任されて、運営案を提案し受け入れられて、運用が軌道に乗ったので嬉しかった。心臓カテーテル業務など患者と接する治療など臨床業務を望んでいたが臨床業務は少なく、経験不足を痛感している。患者の状態を患者の家族から尋ねられても患者の全般的な知識が不足しているため、対応に苦慮している。ましてや医師に自分の意見が言えず、呼吸器などの機器の設定変更など看護師を通して上申している。「学校」については、学校の先生から「臨床工学技士の理想像」を教えてもらい、臨床工学技士像が膨み、臨床工学技士の業務に夢を持って就職した。しかし、現実とのはざまで悩み、施設による臨床工学技士の立場の違いを痛感し、学生時代に多く夢を持たせ過ぎていると感じた。学校において施設による臨床工学技士の立場の違いを教えることの必要性を語っている。また、臨床実習に行った病院が良く見えてしまうほど、今の職場との違いを感じてしまい、職場を『底辺』と表現しているが、現業業務にやりがいを感じており今後の抱負も語られた。6考察AとBは業務内容に違いがあるものの、人間関係に恵まれた職場環境、臨床実習を有意義に感じていることは共通している。また「新人職員の職場適応」とい―52―武田明・福田信吾・米澤久幸・宮本靖義・矢澤浩成・藤部百代図2Bのカテゴリー関連の図式化図1Aのカテゴリー関連の図式化

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