中部大学教育研究12
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1はじめに医療従事者の多くが医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師など国家資格や都道府県資格などによる専門職で構成されている。その国家資格の一つである臨床工学技士は、今から25年前(1987年)に誕生した。コ・メディカルの中では看護師、診療放射線技師、臨床検査技師と比較して歴史が浅く、臨床工学分野の学問体系も未成熟であり、一般への知名度の低い国家資格であるが、臨床工学技士は高度化する医療を支える医療専門職の一員として、無くてはならない職種になりつつあり、益々、学校教育の重要性が高まってきている。高度化する医療によって臨床工学技士は多岐にわたる業務内容を要求されてきている。また、各医療機関の担うべき医療の分化により臨床工学技士の業務内容の差異は広がっている。これに対し、養成校は国家試験出題基準を満たした講義内容であるものの、多くの学校では教員の経験に特徴づけられた各養成校独自の講義内容になっている。2目的問題探索型の質的研究を用いて、学生時代の教育における問題点と卒後まもない社会で直面する問題点を探求する。今回は臨床現場の業務について語りが多かった2名について職場適応の視点から分析する。3対象2008年3月に卒業し臨床で1年間以上継続して働いた、臨床工学技士2名を対象とした。就職した医療機関の特徴が異なる対象者の2名について以下にAとBとして示す。Aは、地域医療を主とした病院中心に構成している医療法人に就職したものである。現在、五つの施設を擁するグループ病院の一つで外来での透析医療に携わっている。Bは、700床規模の救急医療をはじめとした高度先端医療を担う総合病院に就職したものである。その総合病院の勤務では、ICUとOpe室業務が中心で患者と接する業務は行っていない。4方法個別に面接を行い、その内容を録音し、文章化する。面接は、半構造化形式で行い、聞き手と対象者の座る位置などを考慮し、聞き手の誘導にならないように注意して実施した。面接時間は、45~60分程度とし、面接内容は、①職場の状況、②職場での経過と感想、③学生時代の臨床実習について、④現段階において講義、実習で必要だと思うことの4点とした。分析はグランデッドセオリー・アプローチに基づき実施した。1)面接内容を文章化して、面接者が断片化した後、複数の担当者にてコード化する。次に、同じようなコード(ラベル)同士をまとめ、上位概念となるカテゴリーを作り名前をつける。そして、カテゴリーとサブカテゴリーを関連づけて現象を表現する。カテゴリーにも上位概念となるタイトルをつけ、関連について矢印などを用い図式化していく。研究の客観性を保つために、本研究では常に複数の担当者により作業を行うことで、データの信頼性を高めた。尚、被験者へは研究内容の説明を行い、面接にて録音をすることや面接で得られた情報の取り扱いは、氏名等を明らかにせず、個人の秘密が十分に守られることを条件に、本評価の成果を医学雑誌や学会発表あるいは医学教育の目的で使用する承諾を得た。本研究は中部大学生命健康科学部倫理委員会の承認を得て実施した。5結果対象者のAとBより、最終コードを「学校」「就職後」と大きく二つのカテゴリーに分けて、関連性を示すように図式化した。矢印は関連性を示す。5.1事例A52床の透析クリニックに勤務している。同じ施設の臨床工学技士5名は、40歳台1名、20歳台4名と年齢構成が若い。グループ内での職場の移動や応援もあるが、まだ対象になっていない。図1は、Aをカテゴリー関連別に図式化したものである。Aは、透析クリニックに勤務し、血液透析治療―51―中部大学教育研究№12(2012)51-53職場適応からみた学校教育の検討-新卒臨床工学技士の事例を通して-武田明・福田信吾・米澤久幸宮本靖義・矢澤浩成・藤部百代

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