中部大学教育研究12
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のあいだに適正な対応があるか否かと問われれば再考の余地はあるかもしれない。中国語コミュニケーション科目に適正な授業時間数を割くことは今後とも必要なことではあるが、私たちが検討し構築しつつある語彙のデータベースに基づくボキャブラリー・チェックを実施し、それをPCのみならず、携帯電話をはじめ、さまざまなデバイスから利用できるように改良拡張を加えていくことや、自前での開発に拘泥しなくとも、検定など資格試験の対策にすでに効果を上げているサービスなどを導入することで、中国語教育の質と効率をより向上させることはそれほど困難なことではあるまい。可能な部分からEラーニングを導入し推進していくことを提案したい。授業時間数のみならず、本学の学生の性質や特徴を踏まえた教材を適切に選択することや、一クラスあたりの受講者数についても適切な規模に設定する必要がある。中国語に対する知識は言うまでもなく、受講者の学習面での心理や外国語教育についても造詣が深い教員を養成することも大切である。本学ではここ数年「魅力ある授業づくり」をFD活動の重点目標として設定しており、「授業サロン」など興味深い取り組みを行っている。それらに積極的に参加することで、平素の自らの授業を顧み、優れた経験は共有し、至らぬ点は改善するよすがとすべきであろう。また、学外のワークショップに参加したり、適切な助言者を求めることも必要であろう。前述のように中国語の運用能力についてもさまざまな水準の学生が入学してくることが明らかになった。初学者のみならず、「特別クラス」の学生たちも学習を進めることで、入学当初よりもより高いレベルの中国語運用能力を身につけられるような教育システムを構築することも肝要である。その際には、留学や派遣プログラムを利用したり、協定校から中国語教員を招聘したりするなど、教育システムに弾力性と多様性を持たせることも必要であると思われる。教員の学生に対する働きかけばかりが重要なのではない。学生の知的な好奇心を刺激し、主体的に継続して学ぶことができるよう、サポートすることが求められよう。「ファシリテーター」としての教員の役割をあらためて認識すべきである。そして、学び身についたことをもとに、自らが専門とする地域や分野に働きかけ、発信できるような環境や制度を作り上げることはできないだろうか。言うまでもないが、これらの教育の方途や手段は、「なぜこの科目を学ぶのか、この教育カリキュラムに沿って学ぶことで、私たちの学生がどのような能力を身につけることができるのか」といった教育目的や到達目標を明確にかつ適切に設定することから始められるべきである。5おわりに学科教育全体における中国語教育システムのあるべき姿を探求することが、冒頭に述べたとおり私たちの一貫したテーマであった。問題は発見され、よりよいものにあらためるにはどうすべきであるかと検討され、方途を見いだしたあるものは日々の実際の授業に還元され、着実に成果を上げつつある。私たちの探求はやむことはない。学科の教育システムを実際に担当する教員により内側から検証することによって、それらに全体的な調整や改善をはかることがこれからも常に求められよう。一方、教育行政部門あるいは大学の組織自体からの要請などといった、さまざまな外的な要因により、私たちの学科の教育システム全体を見直すことが今後あるやもしれない。ただ、そこで学ぶ若者たちを中心に据えた見直しや改編を行うことが最も重要であることは言うまでもない。謝辞本報告における取り組みには、平成24年度特別研究費(CP)「中国語中国関係学科における体系化・普遍化した中国語入門初級教育システムの確立と教育効果の可視化」の一部を使用した。ここにその旨を記すとともに、私たちの教育活動に対する支援に感謝の意を表したい。参考文献・澁谷鎮明、黄強、和田知久「中国語中国関係学科1年次夏期語学研修報告-教育的効果と研修の運営に関する考察」『中部大学教育研究』No.9、2009年12月・和田知久、于小薇、伊藤正晃「中国語中国関係学科特別クラスにおける授業実践の紹介-2009年度、中国語Ⅰ・中国語Ⅱの取り組みについて-」『中部大学教育研究』No.10、2010年12月・和田知久、于小薇、宗、伊藤正晃「中国語中国関係学科における北京夏期研修と通常授業との連携に向けた取り組み」『中部大学教育研究』No.11、2011年12月―50―和田知久・于小薇・伊藤正晃講師国際関係学部中国語中国関係学科和田知久講師国際関係学部中国語中国関係学科于小薇助教国際関係学部中国語中国関係学科伊藤正晃

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