中部大学教育研究12
62/140

ら、「高いレベルで中国語を駆使しうる能力の保証」をうたう1級までの6段階に分かれている。また、HSKは中国語で「漢語水平考試」といい、そのアルファベットによる表音表記の頭文字を取った名称である。中華人民共和国教育部の公認する中国語の語学検定試験で、開発や試験問題の作成は中国国家漢語国際推進事務室が行っており、1990年の中国国内での実施以降、2010年にはCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)に準拠した改訂を経て、中国語運用能力についての国際的な基準となるべき検定試験である。近年は筆記試験と口頭試験に分かれて実施されているが、筆記試験について言えば、初級レベルの1級から、上級レベルの6級までの6段階に級分けされている。本稿執筆時現在(2012年9月)、本学科在籍者は85名(休学者も含む)であるが、そのうち検定試験による資格を取得すべき対象となるのは、必修科目でもある「資格中国語」を履修する2年次以降の学生(64名)である。本学科在籍生の資格試験取得状況を表に示した。表1は級別の資格試験の取得状況であるが、のべ63名の学生が中国語の資格試験に合格している。その中でも最も取得人数が多いのが中国語検定4級であり、取得者総数の6割以上を占めている。実施協会の認定基準によれば「中国語の基礎をマスター」したレベルにすぎず、本学科学生の卒業時の運用能力とするのであれば心許ない限りだが、本学科では2年次の6月に行われる検定試験での全員受験を勧めている。これは、1年次に学んで各自が身につけた中国語の運用能力を、学内の期末試験による到達度の判定のみならず検定という「他流試合」を経験させることによって、「世に認められた能力」であることを実感してもらう意味も持っている。表1級別の資格試験取得状況表2には、学年別の資格試験取得状況を示した。これによると、2年次以降に在籍する本学科学生のうちなんらかの中国語の資格を取得している者は49名であることがわかる。これは2年次以降在籍生の76.6%であるが、就職活動などで実際に対外的に自らの「学びの成果」を示すことが求められる4年生について言えば、9割以上の学生が中国語の資格を取得していることになる。表2学年別の資格試験取得状況と在籍者に占める割合また表3が示すように、4級以外の資格取得者はのべ11名であり、中国語検定とHSKを重複して取得している者が2名いるので、それを勘案しても9名の学生が4級取得以降の各自の研鑽によりレベルの面でも向上していることがわかる。ちなみに中国語検定3級は「自力で応用力を養いうる能力の保証」ができるレベルであり、2級は「実務能力の基礎づくり完成の保証」ができるレベルである。また、HSKについても触れなければならない。HSK4級はCEFRの「B2(Vantage)」であり、「自分の専門分野の技術的な議論も含めて、抽象的かつ具体的な話題の複雑なテクストの主要な内容を理解することができる」などと定義されている。HSK5級は、「C1(EffectiveOperationalProficiency)」であり、「いろいろな種類の高度な内容のかなり長いテクストを理解することができ、含意を把握できる」「社会的、学問的、職業上の目的に応じた、柔軟な、しかも効果的な言葉遣いができる」などと定義されるレベルである。つまり、本学科の4年生は高い割合で高度な中国語の運用能力を備えていることになる。表34年次在籍者の各級の取得状況本稿執筆時現在、本学科4年生の就職希望者12名のうち、すでに1か所以上の企業から採用内定を得ている学生は10名であり、この割合は全学的に見ても非常に高いものである。就職活動は、ただ外国語の運用能力が比較的高いということだけで成就するものでは決してない。経団連が発表した2012年4月入社の新卒採用に関するアンケート結果によると、採用選考時に企業がもっとも重視する要素は9年連続で「コミュニケーション能力」(82.6%)が第1位で、次いで「主体性」(60.3%)、「チャレンジ精神」(54.5%)の順であったという(MSN産經ニュース、2012年7月30日付記事―48―和田知久・于小薇・伊藤正晃検定試験と級取得者数中国語検定4級41中国語検定3級8中国語検定2級5HSK4級(旧HSK3級も含む)2HSK5級(旧HSK7級も含む)7合計63学年取得者数在籍者に占める割合(%)2年生2268.83年生1578.94年生1292.3合計49検定試験と級取得者数中国語検定4級8中国語検定3級6中国語検定2級1HSK4級(旧HSK3級も含む)0HSK5級(旧HSK7級も含む)4合計19

元のページ  ../index.html#62

このブックを見る