中部大学教育研究12
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第1課から第4課までは発音篇で、各課は、「語音」と「注釈」、「練習」の3つの部分に分かれている。第5課から第12課までは、基本会話を中心とする読解篇で、各課は基本的に「本文」と「単語」、「文法」、「練習」の4つの部分に分かれているが、本文の内容に応じて「注釈」が加わった5つの部分に分かれている課もある。第1課から第4課までの発音篇では、現代中国語のローマ字表記であるピンインの声母と韻母、声調の規則を学ぶ。第5課から第12課においては、「本文」と「単語」の部分には、一般的な初級テキストと同様にピンインがついているが、「文法」と「練習」の例文にはピンインの表記がないため、学習者はピンインにたよらず、4週間という短期の学習期間でより多くの漢字の読み方を習得することができる。習得する漢字数は約200字である。語彙面では、常用される単語を中心に、単語数が約140語である。文法の項目では、動詞と形容詞述語文、疑問文及び基本の助数詞の用法が説明される。本文の内容は、自己紹介をはじめ、外出や買い物など様々な場面が設定され、実用的な会話を展開しており、日常的なコミュニケーションに必要な言葉を想定して作成されている。各課の練習問題は、本文の内容に基づいて出題されており、学習者の理解度を確認すると同時に応用能力を高めるものとなっている。2.2.2Bクラスの教材について読解の授業で使用されたテキストは『中級漢語精読Ⅱ』(趙新、李英主編、北京大学出版社、2010年)であった。テキストの本文は主に中国で出版された刊行物や新聞の抜粋を一部加筆・修正したものである。中では現代中国人の暮らしや価値観、中国社会の変貌をストレートに紹介しており、文体も説明文からエッセイ、現代詩まで幅広い。各課は、「単語の解釈」と「本文」、「語句の重点」、「文法説明」、「練習問題」、「閲読材料」から構成されている。単語一覧のみピンインつきで、各課に50語ほどの単語説明がある。語句の重点では、常用される語句を各課に10~12語ほど摘出し、それらの複数の用法を個別に解釈している。文法説明では、各課に10項目ほどの説明があり、中級レベルで必要な学習項目であると見受けられる。練習問題では、選択だけでなく思考を必要とする問題形式に重点が置かれているため、学習者の総合的な語学力を高めるように出題されている。各課の最後にある閲読材料では、新出単語がほぼ見られず、本文と関連のある内容で、文字数が1000字ほどの短文が取り上げられている。それを読むことによって、学習者が本文に対する自身の理解度を確認することができると考えられる。今年度、本学科では中国系の学生のための特別クラスを開講していないため、彼らは普段、中国語でコミュニケーションを支障なくとることができるが、授業時に高度な文章を読む機会が皆無であった。Bクラスの2名の学生にとっては、語学を学ぶだけでなく、いまの中国及びそこに暮らしている人々の生命力が反映された文章に触れることで、行間に書かれた内容をくみ取る力を習得することができたと考えられる。夏期研修プログラムにおいては、Bクラスの開講が本学科の中国語教育の補完的な役割を果たしたと言える。3中国語語彙データベース構築に関する諸規則3.1中国語語彙データベース構築の目的本学科では学生の中国語能力を上げるため、週6コマの中国語の講義が開講されている。教員は講義において会話、文法などを指導し、さらに語学検定対策の指導もおこなっている。語学の講義で使われる教材は2、3冊と少なく、語彙数が検定で出題される範囲を網羅しきれていない。学生の積極性も問わなくてはならないが、教員としてはそれを期待して待っているだけでは、学生の語彙力が上がることは期待できない。そこで、本稿に関わった教員で協議した結果、独自の中国語語彙データベースを構築して、検定の級数、品詞、成語などの項目で範囲を絞り、学生のレベルに応じた単語テストが実施できればという考えに至った。初期段階として検定の級数による分類をおこない、それに伴い漢字の音(音節)による分類を加えて検索による絞り込みができるデータベースを構築することとなった。3.2中国語語彙データベース構築の手段データベースの構築に際し、検索しやすい項目として、声母、韻母、声調の音声面ならびに品詞、検定試験の級数を挙げた。初期段階として、音声に特化したデータベースの構築にとりかかった。音声を詳細に入力することで、詳細な検索が可能となるが、実際の音声と文字表記にズレがあるため、構築の前に表記上の規則を理解し、さらに音声と表記のズレに対して新たな規則を設けなくてはならなくなった。以下に、それらの諸問題を挙げる。3.2.1現代中国語におけるピンイン表記の規則音節による分類をおこなうために、いくつかの規則を設けなくてはならない。現代中国語は一つの漢字に一音節が対応している。音節にはいくつかの音素が存―44―和田知久・于小薇・伊藤正晃

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