中部大学教育研究12
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見たものと講義で学習したものがつながることを示す意図がある。このように、1年次での全員参加の語学研修という機会をとらえ、「言葉だけではない」点を理解させながら、基本的な知識を身につけさせようとする試みを行っている。4「研究入門A」における中国語資料の翻訳中国語学習と中国研究(理解)を結びつけるために、上述のような「言葉だけではない」ことへの認識を喚起するのではなく、「習った言葉をどう使うのか」を示すための試みも行われつつある。2年生の演習科目である「研究入門A」の一部クラスにおいては、「中国語を用いて情報を得る」訓練を施している。本学科の研究入門Aは、主として人文科学系を中心として、中国を研究する手法や初歩的な概念、キーワードを教授するものとなっている。昨年度より、これを中国語の資料を読解し、そのような内容を考える方法を取っている。具体的には、中国で刊行された『図説中国』(中国・五州伝播出版社)を受講生に翻訳させ、その内容を理解・考察させるという方法を取っている。『図説中国』は、中国語で書かれており、中国の基本情報やさまざまな人文・社会的指標(人口、福祉、医療、教育、民族、生活環境)などに関する短い説明文と、図表から構成されている。中国語表現も平易で、2年生が中国という国のアウトラインをおおよそ理解するのによい内容である。また、文章量がさほど多くなく、図やグラフがその理解を助けている。図1は図とグラフが示されたページを示したものである。文章だけのページに比べ、情報量が少ないうえに、絵や数値からその内容を類推しやすい。ここでたとえば、「峰値」が「ピーク(値)」であるなど、基本的な単語が理解できていれば、より早く翻訳できる。さらに言うならば中国の人口についておおよその理解―39―語学学習と海外地域理解をつなぐ図1教材『図説中国』掲載のグラフ質問内容キーワードQ1:あなたが,今回中国に4週間滞在してみて,行く前に持っていたイメージと比べ,違っていたことは何でしょうか?最も違っていたと思うことを1つだけあげて,どのように違っていたのか詳しく説明してください。―Q2:みなさんが過ごした外交学院の敷地には,なぜか団地のような建物が建っていて,おじいさんやおばあさんなど,一見大学とは関係ない人がたくさん住んでいたのに気がつきましたか?①これは何故でしょうか?②またこの人たちはどういう人たちなのでしょうか?単位Q3:現在の中国は,みなさんも見たとおり,経済的に豊かな人と豊かでない人の格差が大きい国です。①みなさんはどのようなところでそれを感じましたか?また,もともと中国はそういう国ではありませんでした。②今のようになったのは何故なのでしょうか?社会主義体制,先富論,市場経済化などQ4:外交学院の宿舎は2人部屋でエアコンがついており,シャワーの出が悪い部屋もありましたが,みなさんにとって,おおよそ快適だったと思います。ところで,同じ敷地の中にあった中国人学生用宿舎は8名1室でエアコンもシャワーもありません。また彼らの中には海外に研修に行く資金がない人もいます。みなさんと交流した学生さんの中にもそういう人は多いと思います。①このことを,あなたはどう考え,どうしたらよいと思いますか?また,②日本と中国の経済格差はどのくらいのものなのか,何らかの数値で示してみてください。経済格差,一人当たりGNIなどQ5:みなさんがお世話になった外交学院は,少し特殊な目的をもった大学です。①ここはどのような大学なのでしょうか?そして,この大学と中部大学は姉妹提携校の協定を結んでいます。②現在両校はどのような交流をしているでしょうか?また今後どのような交流をしたらよいと思いますか?―Q6:みなさんは北京で,多くの日本企業が進出していたり,日本製品が販売されていたりするのを目にしたことと思います。①どのような企業が進出していて,どのような製品が売られていたでしょうか?目にしたものをいくつか挙げて下さい。②その会社や製品はどのような特徴があるでしょうか?調べてみてください。もしかして,みなさんは将来,この学科を卒業してそのような企業に就職したり,取引関係を持ったりすることになるかもしれません。日本企業のアジア進出,合弁企業,経済特区表1「夏期語学研修から帰国したみなさんに考えて、調べてみてほしいこと」質問例

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