中部大学教育研究12
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1はじめに都市建設工学科では、2012年8月5日から7日までの3日間、主に学科の学生を対象に映画制作を通じて都市建設/まちづくりを学ぶワークショップを開催した。まず、本学科と映画制作に疑問を持たれる読者の方も多いと思われる。切掛けは2011年3月11日東日本大震災である。テレビのニュースでは、毎回人命救助のために自衛隊の姿が映し出されていた。しかし、過酷な現場に全国から出向いて長期復興に当たったのは、建設技術者(CivilEngineer)たちであったことを社会は知らない。技術者の卵である学生たちが誇りを持って、自分たちを上手く表現する力を学ぶ術として映画制作を取り入れようとしたのが切掛けとなった。今回のイベントは初めての試みであるが、今後継続的に実施し、内外から認知される学科独自のイベントに育てていくとともに、学科における都市建設/まちづくりに関する教育に反映していくことを企図している。本稿では、都市建設/まちづくりの教育や実践活動における映像との関わりを概観した上で、ワークショップの開催について、導入の経緯、基本構成、実践記録、参加者へのアンケートを整理し、今後の教育活動に寄与する知見をまとめる。2映像と都市建設/まちづくり都市建設/まちづくりと映像との関わりは、多様化している。都市建設/まちづくりの記録や情報発信のために映像制作を行い、様々なメディアにより情報発信を行う活動は一般に見られる。フィルムコミッションの活動による映画ロケの誘致、地域の資源を全面に取り扱う地域映画の制作(「眠る男」、「フラガール」など)も盛んになっている。さらに、映像制作自体に市民が参加する取組も広がりつつ有る。1996年から熊本県ではじまった住民ディレクターの全国への波及が有名であるが、愛知県でも市民によるまちの記録映画を集めた「なごや・まちコミ映像祭」の開催などの実績がある。土木学会でも、土木関係の記録映画などの収集・表彰・上映などの活動を行っている。一方、主に映像リテラシーの観点から、こどもによる映像/映画制作を行うワークショプも盛んになっている。また、まちづくりの観点から市民参加で郷土のまちを題材にした映画制作ワークショップが開かれるようになっている。東海地域では、今回のワークショップの講師を依頼した木全純治氏が、3日間で映画をつくるワークショップなどの実績を積んでいる。これらの流れを統合して、都市建設/まちづくりの教育や実践活動の中に、映画制作ワークショップの手法を積極的に取り入れたのが今回のワークショップである。3ワークショップの導入の経緯本年度、在学生が毎年楽しみにして、主体的に参加できるプロジェクトの創設について、学科内で検討を行った。レゴブロックを使った土木構造物の造形コンペ、スマートフォン向けのまちづくりゲームアプリケーションの開発コンペなどについて検討を行ったが、先述の観点から、都市建設/まちづくりと映像制作を結びつけて、学生が主体的に参加できる取組を行うことが提案され、前述の木全氏のワークショップ手法を活用したイベントの開催が決まった。ワークショップは、オープンキャンパスが開催される3日間で行うこととし、学科の学生に参加を呼びかけるとともに、高大連携の観点から、隣接する春日丘高校にも参加の案内を行った。結果、都市建設工学科の学生から14名、春日丘高校から3名の参加を得た。4ワークショップの基本構成ワークショップは、都市建設ショートムービーワークショップ/トシケン・ザ・ムービー2012と題し、「3日間で映画ができる?都市空間を映像で遊ぼう=学ぼう!」というキャッチフレーズを示して実施した。さらに、都市建設/まちづくりには、空間把握能力、物語創作能力、組織運営能力が必要であり、映画制作はそれらの能力を養うことになるという考え方を示した。ワークショップは、木全氏をはじめ、映画制作の実務経験者を講師に招き、その指導の下で、学生が主体的に企画・制作にあたるという形で実施した。制作期間は、表1のとおり3日間とした。―33―中部大学教育研究№12(2012)33-36都市デザイン能力の獲得のための映画制作教育-都市建設工学科におけるショートムービーワークショップの試み-服部敦・杉井俊夫・武田誠・伊藤睦・山田公夫

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