中部大学教育研究12
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4で示すシャトルシートでも「積極的に発言し、意見を言うことができた」「とてもいいワークショップができた」など好意的な感想を述べている学生が多く、また、「実際にはいろいろな場面で考えて行動することがある」「状況にあわせた対応を考えるのは難しかった」などの意見もあったことから、避難所運営の良いシミュレーションができたと考える。4オムニバス授業の弊害への対応シャトルシートの導入本授業は、表1に示したように、専門分野の異なる複数教員によるオムニバス形式の授業である。このような授業では、多分野に渡った広い知識を一連として修得できる利点があるが、毎時間の担当教員が異なるるため、学生と教員のコミュニケーションをはかる時間が短く、教員からの一方通行の授業になる傾向が強いことや、つぎの担当教員に授業の様子を引き継ぐことが難しいという問題がある。本授業では、その解決策としてシャトルシートを導入している。図6のように、シャトルシートは、15回分の授業の感想、意見、質問などが自由に記述できるようになっている。授業終了時に、学生が記入したシャトルシートを回収し、担当教員は学生の感想や質問を読み、コメント等を記入して、つぎの担当教員に学内便で送付する。受け取ったつぎの担当教員は、授業開始前に机上に学科別で並べ、学生がシートを持ち帰る。この手順により、学生は翌週の授業で教員のコメントを読むことができる。学生の感想や質問などの記述量が教員の予想以上に多かったので、2012年度から記入スペースを倍にして裏面も活用している。シャトルシートにより、担当教員は学生の参加状況や理解度がわかると同時に、つぎの担当教員も学生の様子を把握することができ、オムニバス授業の課題解決につながっている。また、2012年度から、シャトルシートの記述から見られる理解度、授業の姿勢などを成績評価に加えている。また、第1回目のみは「自分の専門からみた災害への対応として、どのような貢献ができるか?」という問に対する意見を求めた。以下に、学生の記述の一部を紹介する。○地震大国の日本が、他国で地震があった際の支援と、防災のアイデアや経験を世界中に広める(国際関係)○災害の歴史や地理の特性から、将来起こるとされる災害規模を予測し、対策を講じる(歴史地理)○自分が子供たちを避難させる立場になったとき、考えて行動できるようにしたい(児童教育)○災害時にも情報伝達が可能な通信技術を作りたい(電子情報)○被災地でできる限り過ごしやすい仮設住宅を考えていきたい(建築)授業の始めに、本授業を受ける動機や専門性と防災との関連性を各自で考え、文章として示すことで、学生の本授業に参加する意識(積極性)を促す効果がある。また、シャトルシートに毎時間の感想や意見を書くことで、学生にとって、終えた授業内容のまとめ・再確認の効果もある。教員間では、学生の意見に対するコメントの記述を―30―杉井俊夫・山田功夫・勅使川原誠司・牧野典子・武田誠・渡部展也グループワークの状況発表の様子図5避難所運営ワークショップの授業風景図6シャトルシートの一例

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