中部大学教育研究12
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われるのも嫌だし。(事例B)9)自分の力で困難に対応する学生は、知らないことをたくさん知りたいという思いや、負けず嫌いで何度も挑戦する姿勢をもっていた。そして、<分からないことは自分で調べる>行動をとったり、困難に対しては<教員・指導者へのサポート要請>を自らおこなうなどの主体性のある行動が見られた。肺の音聞くとかでも、指導者さんに「あ、こんな音聞こえるでしょ」って言われても、自分は聞き取れなくても、何かそれ、何か。指導者さんに聞こえてるから、私に聞こえないわけないから。(中略)聞こえるまで挑戦するみたいな。(事例C)10)望ましい看護師像学生は、<看護師はこうあるべきとか、献身的に看護するイメージがある>といった望ましい看護師像を抱いており、<看護学生は障がい者に対してマイナスな感情を抱いてはいけないという思い>があった。何か「看護師ってこうあるべき」みたいなのとかが多分あったりとか。(中略)何か、そのかかわりとか実際に見れて、指導者さんとか、あの、先生とか。(中略)「きっとそんなこと(生きるって何だろうとか)思ってないんだろうな」って思ったし、先生たちは。(事例A)4.3小児看護学実習での学び小児看護学実習をとおした学びとしては、【患児が発する非言語的サインを読み取る重要性】【子どもの気持ちや発達段階を理解した看護の重要性】【看護技術への自信】【母親の思いと母親の存在の大きさへの気づき】【障がい児の生きる意味についての考えが深まる】の5つのカテゴリーが形成された。1)患児が発する非言語的サインを読み取る重要性学生は患児との言語的コミュニケーションがとれないことに困難感を抱きながらも、患児に寄り添いながら観察をつづけることで、患児の表情や目や手の動き、バイタルサインの安定など非言語的サインを読みとることができ、<患児の示す小さなサインから介入の喜びを見つける>ことができていた。遊びのかかわりをした時に、コミュニケーションがとれないっていうとこで悩んでたんですけど、楽しいとか嬉しいとかいう気持ちを共感できたかなって(中略)「今日、何描くんだっけ」って言うと「あ、あ」とかって発語がみられて。バイタルサインも安定して、酸素(SpO2:経皮動脈血酸素飽和度)も上がったり、表情も笑った顔になって、それでとっても嬉しかったです。(事例A)また学生は、非言語的サインの細かな変化を読み取ることができるようになると、<目の動きとSpO2の変化で反応が分かり、自分の存在を認めてくれていることを実感する>という経験を通して達成感を得ることができていた。酸素(SpO2)が上がって、状態が安定してるから不快ではないんだろうなって感じでした。で、自分がベッドサイドに行くと、自分に反応示してくれて目が動いたりして、私の存在をちゃんと認めてくれているんだなって思って、それに達成感がありました。(事例C)2)子どもの気持ちや発達段階を理解した看護の重要性学生は、実習当初は患児ばかりにかかわっていたことに怒った双子のきょうだいや、リハビリへの気分にムラがある幼児期前期の児へのかかわりに困難感を抱いていた。しかし、患児やその家族とのかかわりを通して<患児の気持ちに添って、リハビリ意欲を引き出す大切さ>を学びとしていた。お姉ちゃんが居ることで、妹(患児)が精神安定してる部分もあったので、そこで上手く一緒にかかわりを見ていくことで、患児の歩けるっていうかそのリハ(リハビリテーション)の目的が向上っていうか。(事例B)また、学童期の児を受け持った学生は、<発達段階を考慮した個別性のある看護の理解>ができていた。やっぱり小児だと勉強もやらなきゃいけないし、運動とか、学校のことも考えるっていうのがすごい新しいなって思いました。(事例E)3)看護技術への自信受け持ち患児には異常姿勢があり骨折しやすく、気管切開部のケアなど生命への影響が大きいと感じるケアを提供する必要性があることへの怖さを感じていた学生は、前述した<学生の心情に寄り添う教員や指導者の存在><学生の主体的な学びを助ける教員や指導―15―小児看護学実習における看護学生の実習困難感と学びの実際

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