中部大学教育研究12
19/140

1研究背景小児看護学実習において、看護学生は子どもや家族とのコミュニケーション、小児特有のケア、小児との遊びなど、様々な困難に直面する。さらに、不慣れな環境への適応や実習記録など、複数の課題にチャレンジしなければならない。看護学生の主な不安として、実習前は子どもや家族との接し方で、実習中は実習記録であるとされ、実習期間や実習環境に合致した到達目標かどうか見直す必要があるといわれている1)。保健看護学科の3年次~4年次に開講される小児看護学実習は、共通した到達目標と課題を設定しているが、本学の看護学生数が一学年約120名である現状から、一つの実習施設のみで臨地実習をおこなうことは困難な状況にある。結果的に、学生によって実習施設が異なり、受け持ち事例も、呼吸器疾患や胃腸炎などの短期入院加療が必要な疾患から、ネフローゼ症候群などの慢性疾患、小手術目的の入院、さらには気管内吸引や経管栄養といった医療的ケアが必要な重症心身障がい児など、多岐にわたる。看護学生の臨地実習における困難感や学びのプロセスは、実習施設それぞれで異なったものであることが考えられるため、教員はそれぞれの実習施設の特徴に合わせた効果的な教育支援をすることが求められる。先行研究においては、小児看護学実習における受け持ち実習での学生の困難感や学びには着目されているが、その中でも重症心身障がい児を対象とした実習についてはあまり報告がされていない。重症心身障がい児を受け持つことは、学生にとっても不安やストレスが多いことが予測されるため、学生の困難感や学びのプロセスを踏まえた柔軟な教育的支援が求められる。小児看護学実習の概要小児看護学実習は既修の小児看護学や小児看護学演習といった学内での学習を基盤として、あらゆる健康レベルにある子どもとその家族への看護を習得することを目指す臨地実習科目である。本学科の小児看護学実習は、健康な子どもと必要な養護の理解を目指す保育園実習(2日)、保育園のまとめと病院実習準備としての学内実習(2日)、健康障がいをもつ子どもと家族の理解や看護援助の習得を目指す病院実習(8日)3週間の実習で構成されている。2目的本研究の目的は、心身障がい児を多く受け入れている病院で小児看護学実習をおこなった学生が抱く不安や困難感、学びに影響する要因を明らかにし、学生の学びを深めるための有効な教育的支援・方略について検討することである。3研究方法3.1対象本学科4年生のうち、心身障がい児を多く受け入れている病院での小児看護学実習を終えた学生44名を対象に調査へのリクルートをおこない、同意の得られた5名を研究対象者とした。3.2データ収集方法本研究メンバーのうち対象学生の実習指導を直接担当しなかった1名が司会者、1名が観察者及び録音担当者となり、1回60分程度のフォーカスグループインタビューを計3回おこない、データ収集をおこなった。グループの人数は、インタビュー時間内にメンバーが十分に意見を言えるよう1グループ2~5名の学生とした。インタビューの実施場所は、本学の教室とした。インタビューの内容は研究協力者の了解を得て録音し、逐語録として文字化し、データとした。インタビューでは、実習開始前から実習終了後における不安や困難と感じたこと、それをどのように克服していったのかについて対象者に自由に語ってもらった。3.3データ分析方法本研究では質的帰納的にデータ分析をおこなった。まず、逐語録を精読し、研究の問いを意識しながら文章・段落を切片化し、その意味を損ねないよう圧縮しコード化した後、事例ごとに実習での困難がどのような学びとなったかについて、構造図を作成し特徴を把握した。次に、全事例それぞれのコードについて類似―9―中部大学教育研究№12(2012)9-18小児看護学実習における看護学生の実習困難感と学びの実際-心身障がい児とその家族とのかかわりを通しての学び-清水いづみ・畑中めぐみ・大村政生・山田恵子石井真・山田知子・石黒彩子

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る