中部大学教育研究12
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1はじめに筆者は2011年の4月より約1年間、本学の姉妹校であるオハイオ大学で在外研究をする機会を得た。アメリカの大学については、大体は分っていたつもりでいたが、学生として過ごす場合と教員として滞在する場合とでは、見聞きするものの幅や深さが全く違い、初めて知ることも多く、新鮮な驚きがあった。また、本学の教育制度や環境と照らし合わせて色々と考えるところも多かった。簡単にいくつか紹介してみたい。2学習・教育環境まず、学生の授業に対する態度だが、日本の大学生よりはるかに真剣に取り組んでいるのは予想通りだったが、意外にも、日本の学生のように教室の後ろに座り、携帯でメールをチェックするなどの学生も目についた。おおざっぱなアメリカ人だ。文字メールなど絶対にしないだろうと思っていたが、それは4~5年ほど前までの話だ。今や学生間ではtextmailが日本の学生と同じように連絡の中心となっていた。私も何度も学生たちに“Doyoudotext?”などと聞かれた。Noと言えば、面倒な顔をされた。ただ、延々と携帯をいじるのではないところがやはり違う。メールやfacebookをチェックするのだが、すぐに、また何もなかったかのように授業に参加し、時には発言までしてしまう。教員も携帯が授業の妨げになっているとは感じていないのか、特に注意もしない。実際、教員が学生に「静かにしなさい」などと発言する場面には一度も出くわしたことはない。ネット環境は羨ましい限りであった。キャンパス内なら屋内・屋外に関わらずどこでもWi-Fiでネットに接続できた。いやキャンパスを一歩出ても、人が集まるレストラン、喫茶店、ファストフード店などではどこでもWi-Fiが使えるようになっていた。特に登録する必要もなく、到着したその日からネットに接続できた。ネットがつながらないお店には学生も集まらないのだそうだ。必然的にどこでもネット環境を整備する。これは、日本でも珍しいことではないが、大学町では日本の数年先を行っているような気がした。また、どの授業でもネットを使うことはごくごく一般に行われていた。どの教室にも無雑作に設置してある端末から、教員はBlackboardと呼ばれる学内授業支援ソフトに接続し、そこから、当日のパワーポイントのスライドショーを開き、授業を始めた。そのファイルには当日の授業スライド、ビデオ、ウェブページなどなどが用意してあり、昔ながらの黒板とそれらを相互に使いながら授業を展開していた。プロジェクターやコンピュータに鍵などかかっていない。パスワード一つで誰でもアクセスできるのである。マルチメディア利用の一般的な授業風景オハイオ大学では、学生もこのBlackboardに課題などを投稿する仕組みになっていた。ほぼペーパーレスで授業が運営できる。これが可能になるのは、やはりその使い勝手の良さと授業支援技術者がいるからである。本学にも同じようなシステムがあるが、制約が多い上、困ったときに教えてもらえる専門の技術者が少ないなどの理由によりなかなか普及しない。頭を下げなければ教えてもらえないようなシステムは日本の教員は使わない。だが、仕事として授業を支援するスタッフがいれば、自然と教員は授業の質や中身に集中できる。ここに大きな違いを感じた。また、本学の視聴覚施設は立派だが、一般の教室にはコンピュータさえ設置されていない。基本的に自分でラップトップコンピュータを持ち込む方式だ。だが、いちいち自分のパソコンを持ち込んで、鍵を事務室から受け取り、プロジェクターに接続するという方法だと、気軽にネットやパワーポイントを利用したいと思う教員は増えない。なかなかマルチメディアを利用した授業が普及し―115―中部大学教育研究№12(2012)115-118《海外便り》オハイオ大学での在外研究を終えて-OUの教育環境と本学の学生の活躍に関する報告-塩澤正

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