中部大学教育研究12
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3結果と考察3.1授業前後の変化3.1.1自尊感情の変化「自己開拓」受講者と対照群における、授業前後の自尊感情得点を図1に示す。群(「自己開拓」受講者群と対照群)×調査時期(授業前・後)の2要因混合計画の分散分析を行ったところ、交互作用が有意であった(F(1,212)=4.85,p<.05,partialη2=.02)。交互作用が有意であったことから単純主効果の検定を行ったところ、授業後における群(「自己開拓」受講者群と対照群)における単純主効果(F(1,424)=5.26,p<.05)と、「自己開拓」授業群における調査時期の単純主効果(F(1,212)=11.52,p<.001)が有意であった。以上の結果から、まず、授業前においては「自己開拓」を受講した学生と対照群の学生は自尊感情が同程度であったことがわかる。そして、授業後では「自己開拓」の受講生は対照群の学生よりも、より自分自身を肯定することができるようになったことを意味する。小塩他(2011)においても、「自己開拓」を受講した学生において自尊感情の向上が示されており、同様の効果が再現されたことになる。図1自尊感情の平均値3.1.2進路選択に対する自己効力の変化進路選択における自己効力について、「自己開拓」受講者と対照群における、授業前後の平均値を図2に示す。群と調査時期の2要因混合計画の分散分析を行ったところ、交互作用が有意であった(F(1,212)=8.23,p<.01,partialη2=.04)。単純主効果の検定を行ったところ、授業前における群の単純主効果(F(1,424)=4.98,p<.05)、対照群における調査時期の単純主効果(F(1,212)=8.20,p<.01)、「自己開拓」授業群における調査時期の単純主効果(F(1,212)=47.91,p<.001)が有意であった。この結果は、授業前の段階において、「自己開拓」の受講生は対照群の学生と比べて、進路選択に対する自己効力が低いことを意味する。その一方で、授業を通じて、授業終了時には「自己開拓」の受講生たちが対照群の学生たちと同水準の進路選択に対する自己効力をもつようになっていることがわかる。小塩他(2011)においても、「自己開拓」受講生の進路選択に対する自己効力の上昇が報告されており、同様の効果が2011年度受講生においても見られたことになる。図2進路選択に対する自己効力の平均値3.1.3時間的展望の変化時間的展望の「自己開拓」受講群と対照群別の、授業前後の平均値を図3に示す。群と調査時期の2要因混合計画の分散分析を行ったところ、交互作用が有意であった(F(1,206)=9.46,p<.01,partialη2=.04)。単純主効果の検定を行ったところ、授業後における群の単純主効果(F(1,412)=7.86,p<.01)、「自己開拓」受講者群の調査時期の単純主効果(F(1,206)=20.85,p<.001)が有意であった。授業開始時においては、「自己開拓」受講者と対照群の学生との間で時間的展望に差は見られないが、授業後では「自己開拓」受講者のほうが対照群よりも時間的展望が高くなっていた。このことは、小塩他(2011)で報告されたように、2010年度と同様に「自己開拓」の授業を通じて、学生の時間的展望がより広がる傾向が見られたことを示唆している。図3時間的展望の平均値―107―キャリア教育科目「自己開拓」の効果

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