中部大学教育研究12
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ように変化したことが示唆された。これは、学生にとってグループ活動が実習中の緊張を解きほぐし、仲間と心を通わせ力を合わせる有効な働きかけになったことを意味する。長濱4)が言うように学生には「協同作業は良いものであるという肯定的な認識が、・・・根底にあり、仲間と心と力を合わせて共に活動することは基本的に善なるものとしてとらえている」とも考えられる。協同的なグループ活動の体験は、グループ活動が自分にも仲間にも有効性があるという学生の認識を強めた可能性があり、体験による影響が示唆された。一方、第2因子【協同志向】と第3因子【互恵効用】は実習後に得点は上がっているが有意な差を示さなかった。今回のグループ活動は、グループの目標を設定してメンバーと協同して課題を達成しなければならないものではなかった。今後は第2因子【協同志向】と第3因子【互恵効用】を肯定的に変化させる様な、グループの課題を解決するためのそれぞれ個人の努力が必要で、グループの中の一員という責任を持ち、お互いが掛け替えの無い存在であることを体験できるようなグループ活動を設定する必要がある。5.2グループの関係性への効果成人実習の前後において、グループの関係性がすべての下位尺度で有意に高くなっていた。グループ活動では、グループメンバーが自由に実習を振り返り、交流することができるように、教員は「褒める」「支援する」「質問する」「情報を与える」「助けを求める」「助けに入る」といった社会的スキルを促した。それによって、学生は、メンバーが困り、つまずき、成功した体験などを聞いたときのコミュニケーション能力として、社会的スキルを学習したと考える。すなわち、学生同士が互いに尊重し支援し合うことを学び合うことによって、個人レベルでの自己受容度や自己効力感が高くなり、グループに協力や協調性が生まれたのではないかと考える。5.3コミュニケーション能力への効果成人実習の前後では、社会的スキルの得点が有意に高くなり、コミュニケーション能力が修得されたことが示唆された。特に「手助けする」「声をかける」「褒める」「ありがとうと口に出して言う」等の項目の得点が有意に高くなっていることから、学習された社会的スキルは、グループ活動の場面でメンバー相互のコミュニケーションに有効に活用されたのではないかと考える。また、社会的スキルは協同作業認識尺度の上昇群において高くなる傾向が認められたことから、グループ活動における肯定的な認識を高める体験は、社会的スキルの活用を促し、コミュニケーション能力の修得に繋がることが示唆された。―103―保健看護学科成人看護学実習のグループ活動における協同的な学びの効果表3社会的スキルの質問項目と実習前後における得点比較表4協同作業認識得点(上昇群・下降群)の社会的スキル得点の変化

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