中部大学教育研究12
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3研究方法3.1調査対象筆者らが成人実習指導教員として関わった14グループの学生のうち同意が得られた学生92名を対象とした。調査期間は平成22年1月~平成24年5月であった。3.2調査方法と調査内容成人実習初日と最終日に、学生控え室において調査用紙を配布し、回収した。用いた尺度は、協同的なグループ活動を通して学生がどのように認識しているかを測る尺度として、長濱らが開発した「協同作業認識尺度」18項目4)を用いた(資料2)。この尺度の第1因子【協同効用】は、学生がグループのメンバーと共に協同作業をすることによる有効性を示す。第2因子【個人志向】は、グループメンバーと協同して作業を行うよりも一人で作業をすることに価値を見出す傾向を示す。第3因子【互恵懸念】は、協同作業から得られる恩恵は人によって違いがあると捉えていることを示す。ただし、第2、第3因子については、得点を反転させたうえで、それぞれ【協同志向】【互恵効用】と命名した。調査は、5件法で回答を求めた。また、グループの関係性およびコミュニケーション能力に必要な社会的スキルの修得状況を測る尺度として津村らが開発した「ラボラトリー方式体験学習効果測定尺度」7)から下位尺度「グループへの満足度」「グループへの協力度」「他者との関係(広さ及び深さ)」「共感・協調傾向」「自己受容度」「自己効力感」「社会的スキル」(4件法,45項目)を使用した(資料3,表3)。この尺度は、グループ活動の効果をグループ、対人間、個人のレベルで測るものである。―100―松田麗子・牧野典子資料1グループ活動の概要資料2協同作業認識尺度の項目①実習前のオリエンテーションで、毎日の実習後のグループ活動としてカンファレンスをおこなうことを説明しカンファレンスの目的と方法、実習前後の調査用紙について説明をした上で、参加意思を確認する。②参加意思のある学生を対象にし、調査用紙への回答を求める。③学生は、病棟での実習を終えた後、学生控室で30分程度のカンファレンスに参加する。④毎日のカンファレンスの内容は、、その日の実習の振り返りとし、特にテーマは設定しない。⑤参加者の役割(司会者、書記、タイムキーパーなど)は、特に決めない。⑥教員は、コミュニケーション能力の修得を促すため、社会的スキルの活用を勧める。(社会的スキルとして「褒める」「支援する」「質問する」「情報を与える」「助けを求める」「助けに入る」の活用を勧める)⑦教員は、学生の社会的スキルの活用を、学生の発言や態度から見つけて、「褒める」「賛同する」などをおこない支持する。⑧教員は、カンファレンスが学生主体でおこなわれるように留意する。第1因子【協同効用】1たくさんの仕事でも、みんなと一緒にやればできる気がする。2協同することで、優秀な人はより優秀な成績を得ることができる。3みんなで色々な意見を出し合うことは有益である。4個性は多様な人間関係の中で、磨かれていく。5グループ活動ならば、他の人の意見を聞くことができるので自分の知識も増える。6協同はチームメートへの信頼が基本だ。7一人でやるよりも協力したほうが良い成果を得られる。8グループのために自分の力(才能や技能)を使うのは楽しい。9能力が高くない人たちでも団結すれば良い成果を出せる。第2因子【協同志向】10周りに気遣いしながらやるより、一人でやる方が、やり甲斐がある。11みんなで一緒に作業すると、自分の思うようにできない。12失敗した時に連帯責任をとわれるくらいなら、一人でやる方が良い。13人に指図されて仕事はしたくない。14みんなで話し合っていると時間がかかる。15グループでやると必ず手抜きをする人がいる。第3因子【互恵効用】16協同は仕事の出来ない人たちのためにある。17優秀な人たちがわざわざ協同する必要はない。18弱い物は群れて助け合うが、強い物にはその必要はない。

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