中部大学教育研究12
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1目的これまでわれわれの研究グループは、中部大学の新入生を対象とした学生相談室アンケートについて、継続的な分析を行ってきた(願興寺・小塩・桐山,2007;小塩・願興寺・桐山,2005,2006,2007a,2007b,2008a,2008b;小塩・桐山・願興寺,2006;小塩・佐藤・願興寺・桐山,2011;小塩・吉住・佐藤・願興寺・桐山,2009,2010;脇田・小塩・願興寺・桐山,2007)。これまでの報告では、ある指標に注目してその入学年度による変化を追ったり、ある入学年度に注目して学部・学科別の得点や選択率の差に注目したりしてきた。学生相談室アンケートは、新入生を対象として恵那キャンパスで行われる研修の中で継続的に実施されてきた。このアンケートは1988年度から研修に参加する全新入生を対象に行われており、一部の年度に欠損があるものの、2012年度で25年間のデータが蓄積している。果たして、この25年間で、中部大学に入学してくる学生の意識は変化したのだろうか。学校法人中部大学七十年史(大西,2009)によると、中部工業大学は1984年に工学部に加え経営情報学部と国際関係学部を設置し、3学部10学科の総合大学「中部大学」として新たにスタートした。そして1998年4月、中部大学女子短期大学からの改組転換により人文学部が誕生、2001年4月には応用生物学部、2006年4月には生命健康科学部、2008年4月には現代教育学部が設置された。学科の新設や改組が順次行われることにより、2012年現在、中部大学には7学部29学科が設置されている。このような学部・学科の新設によって、入学してくる学生の層に変化が生じるとも考えられる。しかしながら本報告では、中部大学に入学してくる新入生の意識が全体として変化しているのかどうかに焦点を当てる。なお、限られた紙面で学生相談室アンケートのすべての項目について報告することはできない。そこでここでは、中部大学選択理由、進学目標、学科選択理由、学業への取り組み方、教員とのかかわり方、かかわり希求、学科選択満足度の7つに焦点を当てる。これらは、中部大学への進学にあたっての学生の意識を反映した項目であると考えられる。2方法2.1回答者数各入学年度の総回答者数を表1に示す。1996年度新入生に関しては、データを入手することができず、欠損している。1988年度から1997年度までについては各項目への選択者数のみ、1998年度以降については各回答者個人のデータが存在している。表1入学年度と回答者数2.2分析対象項目学生相談室アンケートは4つのパートで構成されており、第1のパートは中部大学を選んだ理由や大学に進学するにあたっての目標、学科を選択した理由、第2のパートは学業への取り組み方や教員とのかかわり方、第3のパートは満足度や悩みの有無、悩みの内容、第4のパートは健康理解のための調査項目などである。本報告で分析の対象とする6項目は表2に示すとおりである。「中部大学を選んだ理由(中部大学選択理由)」「この大学に進学するにあたっての目標は(進学目標)」「いまの学科を選んだのは(学科選択理由)」については複数回答が可能な項目であり、「学業への取り組み方」「大学の先生とのかかわりについてあなたは(教員とのかかわり方)」「先生とどのようなかかわりを求めているか(かかわり希求)」「中部大学に入学し、現在の学科を選んだことについてあなたの気持ちは(学科選択満足度)」については選択肢のうち1つを回答する形式であった。―91―中部大学教育研究№12(2012)91-98中部大学新入生の意識変化-25年間の学生相談室アンケート結果より-桐山雅子・小塩真司・願興寺礼子・佐藤枝里

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