中部大学教育研究11
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1はじめに全学共通教育に関する大幅なカリキュラム改訂に伴い、全学向けの英語教育についても、理念・内容・方法について見直しが行われ、本年度(平成23年度)から新たな方針に基づいた教育が実施されている。実施に当たって策定した教育理念・内容・方法については、大門他(2010)で示した通りである。本稿では、春学期が終わった時点での結果について報告する。教育の実施にあたり、非常勤を含む教員間での方針に関する認識を共有するために、案内文書を作成した。特に留意した点は、(i)厳選された内容がどのクラスでも必ず教授されるように計らうこと、及び(ii)共通テストの実施により、教授の結果について検証すること、である。教授内容については、(i)語彙、(ii)文法、(iii)読解方略(リーディング・ストラテジー)の三つに特に焦点を当てることとした。語彙については、EnglishforGeneralAcademicPurposes(EGAP)を重視するという方針に沿って、教科書に出現するものから100語を抽出した。文法についても、同様の方針に従い、学術的文書で用いられる基本的な文法事項を選定した。読解方略については、教科書で紹介されているものを中心に教授することとした。上記の3点について、到達度を測る到達度確認テストを作成した。ただし、語彙については、日本語を英語にする問いと英語を日本語にする問いの2種類を含めた。したがって、テストの内容は(i)語彙1(日本語を英語にする)、(ii)語彙2(英語を日本語にする)、(iii)文法、(iv)読解方略の4項目とした。入学時のフレッシュマンテストに従い、上級・中級・初級の3つに分けてクラス編成を行い、上級クラスと中・初級クラスでは異なる教科書を用いることとした。文法と読解方略については、可能な限り共通の内容を教授するようにしたが、語彙については、教科書が異なるため、共通性を持たせることはしなかった。到達度確認テストの内容については授業開始時からウェブサイトで公開し「授業内容に真面目に取り組めば、誰でも満点を取ることができる」ことを目指した。2到達度確認テストの結果到達度確認テストの受験者は2,336名。このうち1年生は2,182名、再履修者(2年生以上)は154名であった。1年生で未受験のものは169名だったが、そのうちの47名は特技セレクションによる入学のため今回のテストの対象外となっている。なお、1年生の受験者2,182名のうち13名はフレッシュマンテストを受けていないため、今回の分析対象からは除外した。したがって、分析の対象となった1年生は2,169名。再履修者154名と合わせて、分析の対象となったのは、2,323名である。上級者と中・初級者は試験内容が異なるため、別々に分析した。また、再履修者は、中・初級者と同じ内容の到達度確認テストを受けているが、2011年度のフレッシュマントテストを受けておらず、到達度確認テストとの比較ができないため、中・初級者とは別に分析を行った。なお、分析にはSPSSStatistics18とMicrosoftExcel2004forMacを用いた。2.1上級者上級者299名の到達度確認テストの結果は、表1および図1~図4に示す通りである。ただし、比較を容易にするために、全てを100点満点に換算してある。したがって、図中の「平均点」は厳密には「平均正答率」のことである。表1上級者のテストの結果2種類の語彙テスト、文法テスト、読解方略テストのいずれにおいても正答率は高く、ある程度満足できる到達度に達していると言える。ただし、語彙テスト・文法テストと比べると、読解方略テストの成績のばらつきは大きい。―87―中部大学教育研究№11(2011)87-94全学英語教育に関する中間報告大門正幸・柳朋宏・西村智・野田恵剛・山田伸明

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