中部大学教育研究11
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サートをテーマにした「名古屋を音楽でいっぱいに」、社交ダンスを子どもに広めようと活動する人を主人公にした「社交ダンスを子どもに」、そして、「名古屋市が始めた放置自転車の活用」などの企画が多くの票を集めた。受講生39人のうち、これら上位の企画を出した7人を「ディレクター」に任命し、チームのリーダーとした。残りの32人は、7つの企画の中で自分が参加したいテーマを選び、それぞれ撮影や音声などを担当することとした。3.3「③構成」と「④出演交渉」次の「構成」を考えるステップでは、学生たちはチームでの作業に困難を感じたようだ。大会での発表で、このことについて学生たちは次のように語った。学生:この授業ではディレクターのもと、チームにわかれて作業を進めました。その中でチームをどうまとめていくか、そこが本当に難しかったのです。私たちのチームは、メンバー6人のやる気がばらばらでした。積極的に参加しようという気持ちがほとんどない人もいました。私がこういう番組にしたいと思っていることが伝わらない。そう感じて本当に悲しくなりました。そこで、私はうまくいっているチームのやり方を参考にしようと思いました。別の学生:私たちのチームも、最初はみんなあまりやる気がありませんでした。でも、その中で、1人が熱心に私の話を聞いて、アイディアを出してくれました。そうすると真剣に聞いてくれる人が増えていきました。この経験から、チームをまとめていくには、リーダーを理解してくれる味方をまず1人作ることが大切だと学びました。さらに、みんなの意見を謙虚に聞くようにすると、だんだんチームメイトがいろいろな意見を出してくれるようになりました。その中で私は、1人1人がそれぞれ得意な分野があることに気づき、それぞれ得意な分野をいかした仕事を担当してもらうことにしました。上記のように、学生たちの発表から、チームで構成を考える作業によって、社会人基礎力の3つの柱のうち「チームで働く力」が高まったと学生たちが感じていたことがうかがえる。ディレクター役の学生7人にとっては、もともと自分が書いた企画書だけに、授業に対するモチベーションは当初から高かった。クラスの「核」となる7人に引っ張られる形で、当初はモチベーションが低かった学生も、次第に授業に積極的に参加するようになった。番組の構成を検討する際には、写真2のように、白いウレタン製のボードを用い、撮影したい項目・内容ごとにポストイットに書いてはっていくよう指導した。こうすることで、チーム内での情報共有がしやすくなるとともに、他のチームにも、どのチームの作業が進んでいるかが一目でわかる。このため、上記学生の発言のように、「作業が進んでいるチームに秘訣を聞きに行く」ということもしやすくなったようだ。写真2チームごとに構成を検討この中盤の時期で、学生たちが最もとまどったのが「出演交渉」だった。大会の発表で、学生は次のように述べた。学生:私たちは、学生の路上ライブコンサートをテーマにしました。撮影するには、その主催者、ある文化事業団でしたけど、そこにまず話をして、学生への取材許可をとらなければなりませんでした。こんなふうに、知らない社会人に電話をして何かを頼むのは初めての経験で、すごく緊張しました。どきどきしながら電話をすると、『取材内容をFAXして下さい』と言われました。社会人の方と文書をやりとりするのも初めての経験でした。「面識のない社会人に何かを依頼する」こと、しかも電話や文書でやりとりをすることは、アルバイトをしている学生にとっても初めての経験だったようである。この授業では、写真3のように企業や役所などに学生自らが電話をし、訪問して出演交渉を行った。学生たちには、出演交渉で何か困ったことがあったら、すぐ筆者に連絡するよう、社会人の基本である「報告・連絡・相談」も徹底させるようにした。さらに、学生たちには、筆者の書いた「授業へのご協力のお願い」の紙を持たせた。授業の趣旨や、筆者の連絡先を明記したものである。責任の所在を明確にし、不明点やトラブルが生じた場合、筆者に連絡してもらうためのものであった。幸いにも筆者に連絡が入ることはなかった。―83―「映像制作」授業を通した「社会人基礎力」の育成

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