中部大学教育研究11
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1はじめに昨年2010年12月1日、経済産業省主催の「社会人基礎力育成グランプリ・中部地区予選大会」が名古屋市で開催された。この大会は、大学ごとに、学生3人と教員1人合計4人がチームとして参加し、日頃の授業・ゼミ・研究等を通して、「社会人基礎力」をいかに育成・成長させてきたのかを発表するコンクールである。昨年度で4回目を迎えたこの大会に、筆者らは本学から初めて参加した。チームのメンバーは、人文学部コミュニケーション学科の2年生(当時)3人と筆者の合計4人である1)。本稿では、この大会での本学チームの発表、および他大学の発表について報告するとともに、大会の審査員(主に企業の人事担当者)の講評をもとに、企業側が大学に求める取り組みについても報告したい。2「社会人基礎力育成グランプリ」とは2.1「社会人基礎力」について「社会人基礎力」は、経済産業省が「職場や社会の中で多様な人々と共に仕事をしていくために必要な基礎的な力」として2006年に発表した概念である2)。「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの力と、「主体性」「働きかけ力」「実行力」「課題発見力」「計画力」「創造力」「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「情況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」の12要素で構成されている(経済産業省、2010)。2.2昨年度の大会この「社会人基礎力」の育成事例・成果を発表する「社会人基礎力育成グランプリ」は、2007年度から始まった。2009年度には全国53大学、2010年度には全国99大学が参加した。教員発表(3分間)、学生発表(12分間)、審査員との質疑応答(4分間)の計19分間の中で、授業を通して学生たちが「社会人基礎力」をいかに向上させてきたかを発表し、競い合う大会である。昨年度の中部地区予選大会には、本学を含め13大学が参加した。このうち、最優秀賞を受賞した中京大学総合政策学部、宮川正裕教授のチームは、「産学連携経営改善プロジェクト」と題して発表した。2年次で経営学理論とマネジメント手法を学び、3年次で学内のイタリアンレストランの経営改善に取り組んだゼミについての発表であった。詳細なマーケティングリサーチに基づく、新メニュー提案など経営改善の取り組みが報告された。また、豊田市、トヨタ自動車などと連携し、交通安全教材の開発や交通安全啓発活動に取り組んだ愛知学泉大学、地域おこしを目的に「熊野古道ツアー」を企画した三重大学など、文系理系問わず、さまざまな分野の発表があった。この中部地区はじめ、各地の地方予選で最優秀校に選ばれた計8校が2011年3月9日に東京で行われた決勝大会に出場した。優勝したのは関東地区代表の多摩大学チーム。経営情報学部の村山貞幸教授のゼミ生たちが「和紙キャンドル・ガーデン」というイベントを企画し、東京ミッドタウンに企画を持ちこみ、交渉を重ねてイベントを実現し、最終的に5000人以上の来場者を集めたという発表であった。何度も企業側から却下されたものの、ゼミ生みんなで改善点を考え、イベントを成功させた努力が高く評価された。3中部大学チームの発表3.1人文学部コミュニケーション学科「映像制作D」の授業中部地区予選大会で、中部大学は、「地域を取材しドキュメンタリー番組を制作-番組制作を通して社会人基礎力を身につける授業活動-」と題して発表を行った。学生メンバーの3人は、人文学部「映像制作D」の受講生である1)。まず、この授業の全体像について略述する。「映像制作D」の授業は、映像コンテンツの制作を通して番組制作スキルを身につけること、「メディアからの情報を批判的に読み解き、自ら発信する力」としてのメディア・リテラシーを身につけることを目的としている。昨年度は39人が受講した。この授業では、39人がチームにわかれ、半年間でそれぞれのチームが7分前後のドキュメンタリー番組を制作することを課題とした。ドキュメンタリー番組の制作は、多くの場合、次の7つのステップで行われる。―81―中部大学教育研究№11(2011)81-85「映像制作」授業を通した「社会人基礎力」の育成-経済産業省「社会人基礎力育成グランプリ」で求められたもの-近藤尚

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