中部大学教育研究11
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と「1日目フリーティング」がそれぞれ2名(4.8%)、「入浴」と「花火大会」がそれぞれ1名(2.4%)の順であった(図3)。実習前の「期待しているプログラム」と、実習後の「印象に残ったプログラム」と「仲間との交流が深まったプログラム」はある程度共通するプログラムが挙げられていた。しかし、実習後の「印象に残ったプログラム」と「仲間との交流が深まったプログラム」が完全に一致するものではなかったことは少し意外な部分であり、「印象に残ったプログラム」には、仲間との交流が深まった要素以外の影響も与えていることが考えられる。「仲間との交流が深まったプログラム」で最も1位の回答が多かった「登山」は、2名のリーダーを含む10名程度の少人数制の班単位で、およそ5時間かけて山頂を目指すというプログラムである。途中、岩場や片側崖の難所もあり、声を掛け合ったり、手を貸したり、荷物を代わりに背負ったりといった、相互に助け合う場面も多く見受けられ、そうした協同作業を通して、コミュニケーションが多く生まれ、交流が深まったものと考えられる。66.7%の学生が「印象に残ったプログラム」の1位として「キャンプファイヤー」を挙げたことは前述したとおりであるが、「仲間との交流が深まった要素以外の影響」について「キャンプファイヤー」が有する特徴から考察してみたい。大自然の漆黒の闇の中で、原初的な炎を囲み、満天の星空を仰ぐという体験は、キャンプ参加歴の豊富な学生にとっても非日常的な体験と言えよう。3日目の夜に設定され、当該行事への参加を検討し始めた入学直後、もしくはキャンプ初日から3日目までの自身を振り返る、自己と対峙する内的心的作業が促進されやすいと考えられる。また、暗闇と大きな炎は太古につながる無意識的なものを想起させ、感情的により繊細になりやすい条件を有しているとも思われる。また、キャンプファイヤーのプログラムは、印象を強化する要因を内包していると考えられる。第一に「スタンツ(寸劇)」が挙げられるが、上演に向けての準備を通して協調性が養成されたのち、緊張感と達成感がメンバー間で共有される経験である。次に、「トーチトワリング」をはじめとする炎の祭典である。修練なしには行えない上級生の姿を目の当たりにし、ロールモデルとして魅力的な上級生の姿に、1年後もしくは2年後3年後の自分を投影する。仲間との交流が深められるプログラムというだけでなく、キャンプファイヤーは多層的多面的な意味を内包することが推察され、そのことが「印象に残ったプログラム」として選択された所以ではないだろうか。ただ、このあたりの内的動きの実際については、今後の質的研究の分析を待たなくてはならない。3.3フレッシュマンキャンプを経験したことによる情動知能への影響「実習前」「実習後」による反復要因と、「男子」「女子」による性別要因を独立変数、EQSの「自己対応得点」「対人対応得点」「状況対応得点」「EQS合計点」のそれぞれを従属変数とする分散分析を行った(表1)。その結果、反復要因においては、「自己対応得点」(F(1,40)=38.82,p<.001)、「対人対応得点」―77―フレッシュマンキャンプの効果図3実習後「仲間との交流が深まったプログラム」表1実習前後の反復要因と性別要因による各得点と分散分析結果52.0861.2350.3159.3838.82***0.420.001(2.12)(1.76)(2.70)(2.24)53.3562.0860.0664.9422.30***2.281.79(2.27)(2.02)(2.90)(2.58)47.2757.3149.1955.2521.81***0.0011.33(1.88)(2.22)(2.39)(2.83)152.69180.62159.56179.5632.96***0.130.90(5.57)(5.52)(7.10)(7.04)F******

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