中部大学教育研究11
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めている点で分量の面でも豊富であるといえる。4.5本学特別クラスでの授業の進め方本テキストを使用した特別クラスでの授業の進め方については特筆すべきことはなく、およそ想定されるべきものであった。つまり、冒頭に新出単語を音読し、課文の音読練習のあと、課文の解説を「単語の用例と解釈」、「類義語の弁別」や「語句解説」を見ながら行い、内容理解のための「思考問題」を解くといった流れである。文法解説は進度によっては触れることのないまま、授業が終わることがあり、練習問題が基本的に宿題として出されるため、受講者は文法解説を自習して練習問題を解くことがある。ただしその場合は、次回の授業で教員から文法解説を受けた後、練習問題の解答・解説を受けることになる。また、教科書の補足として、1000から2000字程度の文章を配布し、朗読練習を課すこともあった。これは、読める単語(漢字)を増やすとともに、程度の差こそあるものの方言の影響が見られる受講者の発音をただす目的から行われたことであった。文章のプリントは事前に配布され、受講者は予習として読めない漢字の発音と分からない単語の意味を調べ、読み込んでおく必要があったため、受講者によってはかなり時間と精力を割く作業となったようだが、受講者同士で読み合わせたり教えあったりしていたようである。4.6授業出席者による本テキストに対する感想日本での授業との進度や内容の相違に戸惑ったりしていないかとか、教材の難易度が適切かどうかを知ることに加えて、特に研修プログラムの初期には、現地教員と学生の間を取り持つ目的もあり、報告者は初級クラス、上級クラスともに受講学生に適宜聞き取りを行っている。上級クラスの受講生たちは日常会話には全く不便を感じないレベルの中国語の運用能力を持つため、現地教員とのコミュニケーションには問題がないものの、授業の間の休み時間などを使って、現地教員と受講学生、報告者の三者で、研修での中国語学習について感想を聞いたり意見を交わしたりする機会を持つことができた。その中から得た本テキストについての感想は以下の通りである。学生A:中学レベルの内容である。中国で中学校に上がっているとき、実際に学んだ文章もあった。日本語に訳す必要がないので自分には簡単に感じた。ただし授業中の進度が速く、分量が多い。学生B:文章を音読するのが苦手。漢字を書くのも得意ではないが、それ以前に知らない単語も結構多いので、ついて行くのがかなり大変である。学生C:特に難しくてついて行けないというわけではない。新出単語や成語には、自分の知らなかったものも結構出てくるが、テキストをしっかり読めば理解できるレベルである。同義語や類義語の弁別は、日常的な会話の中ではあまり使わないものもあるので難しいと思うこともある。前述の通り学生Bは日本での授業では特設クラスではなく、ゼロスタートの学生と同じ初級クラスを受講しているため、やはり本テキストを使用する科目だけでなく、上級クラスに参加すること自体を他の2名に比べるとやや困難に感じていたようであった。とはいえ、「読む」「書く」能力と異なり、「話す」「聞く」能力については、他の2名と比べてもそれほど差がないと現地教員(と日本側の教員)も判断したため上級クラスでの受講としたのだが、それは研修中の学生Bの様子から見ても、研修の修了試験の成績から見ても、誤った判断ではなかったと言える。4.7まとめ一般的に中国で出版されているテキストと構成面では類似するところがあるものの、外国人向け中国語教育についての新たな研究成果を踏まえた語彙を収録していることや、文法や類義語だけでなく中国語に特徴的な事項についてまで懇切な解説を加えていることなどからも、本テキストには従来のものにはなかった深化し優れている点をうかがい知ることができる。そのようなテキストを本学科の上級クラス中国語科目の中心的な存在である読解課に採用した結果は、受講する学生たちの感想や成績から見ても非常に適切であったと言える。日本で日本人の教員が行う授業だけではまかないきれない、豊富な関連語彙や、類義語や概念を表す語句の解説などを受けることができたのは積極的に評価すべきである。外交学院教員の教育目標は、本学学生の求めるものに近く、効果的な授業が行われたと判断することができよう。ただ、問題点がなかったわけではない。「日本語に訳す必要がないので自分には簡単に感じた」という受講者の感想に、報告者は今回の上級クラスの授業には「大きな落とし穴」が存在することを指摘せざるを得ない。確かに、選択された教材と行われた授業のレベルは受講者たちに合致し適切であった。しかし、彼らが中国の中学校で受けた国語の授業みたいだったという感想からも分かるように、日常的な中国語運用の運―67―中国語中国関係学科における北京夏期研修と通常授業との連携に向けた取り組み

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