中部大学教育研究11
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なお、ここで行った「概説」の内容は、舛山が担当する専門必修科目「中国経営論」の内容を、この授業向けにまとめたものである。ある意味では、学科の中心となる専門必修科目「中国経営論」について、演習科目である「研究入門B」において、受講生の作業などを通じ、座学で得た知識の定着や応用を行っているともいえる。この両科目は本学科の必修科目である関係で、すべての2年生が受講しており、そのような方法も可能である。第4パートでは、ここまでの内容を踏まえ、中国に何らかの形で進出している中部圏の企業について事例研究を行った。ここでもやはり舛山が「中国進出企業の業種と企業の特性」について概説を行った上で、教員の配布した企業のリストの中から、受講生が関心を持つ企業について1つ以上ピックアップし、その企業の特性、業種、中国進出を含む海外進出の状況、経営の状況などについて、企業HPのIR情報や、有価証券報告書(EDINETを利用して入手)などから調査し、レジュメを配布しての個人発表をさせた。この個人発表については、フォーマットが自由であったためか、受講生によっては、発表のやり方が飲み込めず、予定よりもやや発表の日程がずれ込んだ。また個人発表をしている時期に、舛山が調査を行ったことのある近隣の中国進出企業(K産業)に赴き、本社工場の見学を行った後、中国担当者にレクチャーを受けた。最後の第5パートでは、キャリアセンターに依頼し、3年次に行われるインターンシップ制度についてレクチャーを実施した。ここで特に翌年度春にインターンシップのガイダンスがあることをアナウンスしたためか、参加する学生の割合が高かったようである。4体験を通じた学習と進路への意識今回の「研究入門B」においては、前述のように、何らかの実体験を軸としながら社会科学分野の基礎について学習するとともに、本学科卒業生の就職先の選択肢と考えられる中部圏の中国進出企業について「業界研究」「企業研究」をさせるという目標がある。これらの「体験」の部分についてやや詳しく報告したい。4.1卒業生へのインタビュー授業第3週に行った「卒業生インタビュー」では、本学科がまだ設置3年目で卒業生を出していないことから、国際文化学科卒業生の中から、在学中に中国語を学習し、本学の姉妹校に派遣留学した経験があり、中部圏の中国進出企業に勤務するI氏に依頼した。授業では、科目担当者の一人である澁谷がI氏に代表でインタビューを行うという形式で進行した。そして受講生には、インタビュー終了までにI氏への質問を考えることと、最も重要と考える点についてまとめさせ提出物とした。このインタビューでは、①在学中の中国語学習や派遣留学を中心とした学生生活、③卒業後の進路、③現在の勤務先での業務とルーティンワークについて聞いた。ルーティンワークについて尋ねたのは、特に学生にオフィスワーカーの日常業務のイメージが無いと感じていたためである。これらの点についてI氏には、誠実に答えていただいたが、上記①に関しては、中国への留学と、帰国後の留学生との交流が大きなきっかけになっていること、上記②については、卒業後にも上海に留学し、そこで日本の大手旅行社に現地採用されて2年程度勤務したことがキャリアアップにつながっていることが話され、中国で働くという進路への一つの例が示された。また現在勤務する企業が、中国に工場を持つ中部圏の繊維メーカーであることと、I氏の主たる業務が、日本と中国の工場を結ぶための、「各種文書の日本語への翻訳」であることも、受講生には具体的な「働く姿」のイメージ形成に役立ったのではないかと考えられる。4.2企業経営者によるレクチャー次に、第6週には、実際に中国に進出し、長く関係を保っている企業の経営者を招請し、レクチャーを依頼した。依頼の際には、本学科の特徴と、科目の趣旨、対象が2年生であることを伝えた。なお、この企業は、中部圏で各種の印刷を業務としている企業で、本学卒業生も勤務している。レクチャーでは、経営者のK社長より企業の紹介、業種・業務に関する説明に続き、現在中国で行っている業務内容、そこから見た中国ビジネスと日中関係についての内容が語られた。特に、K社長が自ら体験したビジネスや中国人ビジネスマンとのかかわりや、メディアではほぼ登場しない中国人像は、中国と関係を持ちながら働くことや、現在の日本における中国イメージを受講生が考える上で、一つの契機になったものと考える。また、年賀状などの印刷物の日本語入力業務を中国で行うという方法は、前週までに「企業の中国進出」に関するグループワークを行った受講生の想像を超える進出の方法であり、よい実例となった。4.3「文系の企業見学」さらに、第11週の授業では、瀬戸市に本社があり、中国に進出をしているK産業に企業見学を依頼し、教員2名が引率し、受講生は本社工場の見学をするとと―57―中国語中国関係学科におけるキャリア教育の試み

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