中部大学教育研究11
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1はじめに中国語中国関係学科のカリキュラムには、1年次の基礎演習から4年次の卒業研究まで、すべての学年に演習科目が配置されている。「研究入門B」は2年生配当の演習科目であり、学科設置2年目の昨年(2010年)度に初めて開講された。この科目の内容については、前年度に学科内で討議を重ね、何らかの体験を軸としながら、本学科の学生に必要な社会科学系の学術用語・概念や視点を身につけさせることを目的とした。この際に、科目の中で追究するテーマとして「中部圏の中国進出企業研究」を設定し、受講生にこのテーマについて調査・作業をさせるという方針にした。「中部圏の中国進出企業研究」というテーマを設定したことから、「これはそのまま学生の就職活動になるのではないか」という指摘が学科内からあったため、教授内容の調整を行い、受講生に将来の進路や、「中国関係企業で働く」、「中国語と言うスキルを持っていかに働くか」ということについても、さまざまな体験を通じて学ばせることとした。本稿は、このような特徴を持って行われた、2010年度秋学期の「研究入門B」における、学科の特色を念頭に入れたキャリア教育の試みについて報告するものである。2中国語中国関係学科2年生向け演習科目「研究入門B」の位置づけと運用以前より国際関係学部では、学科を問わず、1年次から4年次まで演習科目が設けられている。文系学部においては、本学に限らず双方向型の教育システムとしての演習(ゼミ)科目が設置されている。特に本学部では、2000年度というかなり早い時期より低学年向けの演習科目(基礎演習)が設置されており、これまで学生のスキルアップや、教員との相談の場、大学について知る場としての役割を果たしてきた。「研究入門」は、フレッシュマンゼミとしての「基礎演習」と3年の専門演習を結ぶ必修の演習科目として、2002年カリキュラムより設置されており、学科によってその方法や内容は違う部分もあるが、「中間論文」の作成(国際関係学科・科目名称は2009年度より「プレ演習」と変更)や、学生の研究テーマ・研究対象地域の決定(国際文化学科)など、各学科の専門や専門教育のコア部分へと2年生を導く役割を果たしている。中国語中国関係学科では、2009年の学科設置の際に、学部内の他学科に合わせる形で、2年次に「研究入門A・B」をそれぞれ春・秋学期に配置した。この「研究入門A・B」の内容については、学科内で協議し、研究入門Aにおいては、中国を題材として人文科学的視点(人類学・社会学など)の基礎を、研究入門Bにおいては、社会科学的視点(経済・経営学、政治学など)の基礎を身につけさせるという方針とした。これは、本学科の教育目的に、中国語語学能力の養成以外に「中国という地域の多面的な理解」があり、これは中国という地域を、上記の人文科学的視点と、社会科学的視点の双方で見ることができることを目標とするためである。本学科のような、地域を対象とし、複数の学問分野にまたがる、いわば複合系の学科には、このような内容の科目が必要と思われる。「研究入門B」では、社会科学的視点の基礎を教授するということから、冒頭にも述べたように、経済学、経営学などの分野の基礎的な学術用語・概念や視点を教授することとした。この際に、短い時間の中では、受講生にそのような抽象的な概念の理解が難しいと考えられたため、インタビュー、レクチャー、見学などの体験を通じて、他の講義科目とも連携しつつ、理解させることを試みた。そのためこの研究入門Bでは、より具体的に「中部圏の中国進出企業研究」をテーマとした。これは、本学科で経営・経済学を専門とする舛山担当の「中国経営論」の講義内容と合わせようとする意図もあった。なお、見学、体験、調査などから学問分野を学ばせようとする方向性は、春学期開講の「研究入門A」も同様であり、その詳細は昨年度本誌に投稿した「日本の「中国」を題材とした現地調査実習-中国語中国関係学科「研究入門A」における横浜中華街調査実習報告-」において報告した。また、やはり冒頭に触れたように、学科内の協議において、この科目で追求するテーマにある「中部圏の中国進出企業」は、本学科の卒業生の就職先の一つと―55―中部大学教育研究№11(2011)55-59中国語中国関係学科におけるキャリア教育の試み-演習科目「研究入門B」における中部圏の中国進出企業研究-澁谷鎮明・舛山誠一

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