中部大学教育研究11
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と7回目、8回目が他の授業回よりも低い傾向にあることが示された。「授業の中で他の学生から影響を受けた」については、授業週の主効果(F(7,448)=4.85,p<.001)が有意であった。多重比較の結果から、第5回および第6回よりも、第4回と第8回のほうが高い得点であることが示された。「授業の中で他の学生に影響を与えた」については、授業週の主効果(F(7,448)=3.29,p<.01)が有意であった。多重比較の結果から、第2回と第3回よりも第4回の方が高いこと、また第2回よりも第7回と第8回の方が高いことが示された。「やる気がおきないことが多い」については、授業週の主効果(F(7,448)=3.83,p<.01)が有意であった。多重比較の結果から、第8回よりも第1回と第6回のほうが高いことが示された。「今の自分に自信をもっている」については、授業週の主効果(F(7,448)=4.76,p<.001)が有意であった。多重比較の結果から、授業週が進むにつれて少しずつ得点が高くなる傾向が見られた。これら毎週の得点変化は、毎回の授業内容を反映して変化していると考えられる。その中でも、「自己開拓」の大きな授業目的のひとつである、自尊感情の向上という観点から考えると、「今の自分に自信をもっている」の平均値が第1回目の授業から第8回目の授業にかけて徐々に上昇している点は興味深いと言える。この項目の得点が上昇していることは、「自己開拓」のカリキュラム内容が一定の範囲で授業目的に沿った方向性をもっていることを示唆する。4まとめ本報告では、新たなキャリア教育科目として開講された「自己開拓」の効果を検証する試みを行った。授業開始時における「自己開拓」受講生と対照群との間には有意な単純主効果が見られなかったことから、今回の調査からは「自己開拓」受講生の特徴については明確にはなっていない。しかしながら、対照群と比較した場合、「自己開拓」の授業を受講することによって、受講生の自尊感情の向上、進路選択に対する自己効力の向上、より広い時間的展望が得られること、生活習慣を変化させるような改良型セルフ・コントロールが向上すること、勤勉性のパーソナリティが上昇傾向にあることが確認された。また、毎回の授業時の意識調査からも、受講生が徐々に自分自身に対する自信をもつように変化していることが示唆された。これらの結果は、「自己開拓」の授業を受講することで、心理的な側面での望ましい変容が生じていることを示している。「自己開拓」の授業は、2010年度に始まったばかりである。今後の受講生においても、本報告のような効果が観察されるのかについては、継続的に定点観測的な調査を行っていく必要があるだろう。また「自己開拓」の受講生がその後の学生生活や就職活動においてどのような結果を残していくのかについて、縦断的かつ詳細な検討が必要である。これらの調査を通じて、包括的に「自己開拓」の授業効果を探るのが今後の課題である。文献Oshio,A.,Abe,S.,&Cutrone,P.(2011).ReliabilityandvalidityofaJapaneseversionoftheTenItemPersonalityInventory(TIPI-J).Posterpresentationatthe2ndBiennialConferenceoftheAssociationforResearchinPersonality.Riverside,California,USA.桜井茂男(2000).ローゼンバーグ自尊感情尺度日本語版の検討筑波大学心理学研究,12,65-71.白井利明(1991).青年期から中年期における時間的展望と時間的信念の関連心理学研究,62,260-263.杉若弘子(1995).日常的なセルフ・コントロールの個人差評価に関する研究心理学研究,66,169-175.浦上昌則(1995).学生の進路選択に対する自己効力に関する研究名古屋大學教育學部紀要.教育心理学科,42,115-126.准教授人文学部心理学科小塩真司准教授経営情報学部共通教育科ハラデレック裕子非常勤講師林芳孝非常勤講師間宮基文―54―小塩真司・ハラデレック裕子・林芳孝・間宮基文

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