中部大学教育研究11
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であっても、またグループワークを異なる教員が行っても、ほぼ同じような効果が受講生の間に見られたことを意味する。従って、これ以降の分析で得られた結果は、「自己開拓」として用意されたカリキュラム内容の効果である可能性が高いと考えられる。3.2授業前後の変化3.2.1自尊感情の変化「自己開拓」受講群と対照群における、授業前後の自尊感情得点を図1に示す。群(「自己開拓」受講群と対照群)×調査時期(前後)の2要因混合計画の分散分析を行ったところ、交互作用が有意であった(F(1,155)=8.92,p<.01)。交互作用が有意であったことから単純主効果の検定を行った。その結果、「自己開拓」授業群における調査時期の単純主効果(F(1,155)=10.48,p<.001)が有意である一方で、対照群については調査時期の有意な単純主効果は見られなかった(F(1,155)=0.96,n.s.)。この結果は、「自己開拓」受講生において、授業前に比べて授業後では自尊感情の上昇が見られたことを意味する。自己開拓の授業を通じて、自分自身を肯定的に捉え、自信を持つ学生が増加したと言える。図1自尊感情の平均値3.2.2進路選択に対する自己効力の変化「自己開拓」受講群と対照群における、授業前後の進路選択に対する自己効力得点を図2に示す。群×調査時期の2要因混合計画の分散分析を行ったところ、交互作用が有意であった(F(1,155)=5.29,p<.05)。単純主効果の検定を行ったところ、授業群における調査時期の単純主効果(F(1,155)=29.43,p<.001)および対照群における調査時期の単純主効果(F(1,155)=4.72,p<.05)がともに有意であった。「自己開拓」受講生も非受講生もともに、秋学期という授業時期を通じて進路選択に対する自己効力得点が上昇していた。しかし、交互作用が有意であったことから、その上昇の効果は「自己開拓」受講生のほうが大きいようであった。この結果は、自己開拓の授業を通して、進路選択に対する自己効力感を高める可能性があることを示唆している。図2進路選択に対する自己効力の平均値3.2.3時間的展望の変化時間的展望について、受講群と対照群、授業前後別の平均値を図3に示す。群と調査時期の2要因混合計画の分散分析を行ったところ、交互作用が有意傾向であった(F(1,155)=3.56,p=.06)。また、授業前後の主効果が有意であった(F(1,155)=7.64,p<.01)。単純主効果の検定を行ったところ、授業後における群の単純主効果(F(1,310)=4.42,p<.05)、授業群における調査時期の単純主効果(F(1,155)=10.82,p<.01)が有意であった。グラフにも示されているように、授業までの段階においては「自己開拓」受講生と非受講生との間で、時間的展望の得点には差が見られない一方で、授業後においては「自己開拓」受講生のほうが非受講生よりも高得点となる傾向が示された。このことは、「自己開拓」の授業を通じて、学生の時間的展望がより広がる傾向にあることを示唆している。図3時間的展望の平均値3.2.4セルフ・コントロールの変化日常生活で観察されるセルフ・コントロール行動の個人差を評価する尺度(RRS)の3つの下位尺度それぞれについて、2要因混合計画の分散分析を行った。まず、改良型セルフ・コントロールについては、交―51―新たなキャリア教育科目の効果

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