中部大学教育研究11
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う。そのためには大学として一貫した思想のもとに、在学中のキャリア教育が示される必要がある。さらにはキャリア開発という特性上、自らが学び、自らのものとしていくための4年間の統一された構造によるキャリア教育の提供が求められるのではないかと考える。4おわりに「はじめに」で述べたように、今日起きている時代の大きな転換期において、人が人として生きていくためには、自分の大切な「いのち」を輝かせ、お互いを尊重し合うことが求められていると思う。それは人が生きるための普遍的テーマかもしれない。しかしながら、こういう時代だからこそ、より一層そのことが求められていると言えるのではないか。「キャリア=人生」であるならば、ひとりひとりがどう人生を考えるかということである。キャリアに取り組むことは、人がいかに生きてきたか、生きているか、生きていこうとするか、を問うことである。授業の中で言うならば、学生と教師という括りではなく、生きてきた一人の人間として、いのちを輝かせて、その場にあるということである。そのありのままの人としての関わりこそが、キャリア教育の重要なポイントであると考えている。本科目を通して、学生が自尊感情を向上させ、自分らしく「いのち」を輝かせることにより、行動変革を(望むらくは肯定的方向へ)もたらすことが、社会を新しい局面へと転換する第一歩であると信じる。最後に、学生の課題リポートの「いのち」についての記述から引用して、結語としたい。「私にとって『いのち』とは、(中略)生きている人同士が触れ合い、助け合い、笑顔が生きている人みんなにつながっていくようなイメージです。人は誰でも大昔では家族であり、たとえ現在で関係がつながっていることが見えなくても、小さな優しさはまわりの人へとどんどん広がっていき、まわりまわって私たちはつながっている、と自己開拓で思えるようになれました。」謝辞本報執筆にあたり、大山咲樹氏、戸上昭司氏両氏には、多大なるご協力を頂きました。心から感謝を申しあげます。(注1)小塩真司、ハラデレック裕子、林芳孝、間宮基文(2011).新たなキャリア教育科目の効果(2)-「自己開拓」による学生の心理的変化-中部大学教育研究,11.参考文献古荘純一(2009).日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか光文社,272p.星野欣生(2002).人間関係づくりトレーニング金子書房,126p.メリット,R.A.(1985).人間関係科における教育の試み:見直された体験学習人間関係(南山短期大学人間関係研究センター紀要),第2・3号合併号,pp.9-25.中間玲子(2007).自尊感情の心理学児童心理,61,pp.884-889.津村俊充、石田裕久(2003).ファシリテーター・トレーニング:自己実現を促す教育ファシリテーションへのアプローチナカニシヤ出版,187p.津村俊充(2009).プロセスからの学びを支援するファシリテーション:ラボラトリー方式の体験学習を原点として人間関係研究(南山大学人間関係研究センター紀要),8,pp.30-68.准教授経営情報学部共通教育科ハラデレック裕子非常勤講師林芳孝非常勤講師間宮基文准教授人文学部心理学科小塩真司―47―新たなキャリア教育科目の効果

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