中部大学教育研究11
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に気づくこと、またそれを自己開示することでお互いの人間関係力を磨くことを、本科目では最重要としている。このような自己成長の循環は、「ラボラトリー方式における体験学習の循環過程」と呼ばれている。図1は、それを示したものである。図1体験学習の循環過程2.2.3基本的な流れ各回授業における「実習」が、体験学習の循環過程における「体験する」に、「ふりかえり・わかちあい」が「みる・考える・次はどうする?」にあたる。本科目では、「実習」と同等以上に「ふりかえり・わかちあい」を重要視することから、「実習」と同時間程度の「ふりかえり・わかちあい」の時間を用意した。各回授業の基本的な流れは以下のようになる。■各回授業の基本的な流れ導入・今日の予定とねらいを伝える・今日のテーマについて、小講義(体験からの学びを促進するための理論)を行うこともある。実習・実習の手順やルール、ワークシートの使い方を説明した後、実習を行う。ふりかえり・各自、「ふりかえり用紙」を記入する(個人作業)。※「ふりかえり用紙」に書かれた内容は、記入者自身のものであり、他者に見せる必要はなく、提出もしない。わかちあい・「ふりかえり用紙」を基にグループになって話し合いを行う。・各グループで話し合われた内容について、教室全体で共有する(省略することもある)。コメント・実習で起こったことやわかちあいで話されていたことを踏まえて、講師からコメントする。ジャーナル記入・最後に、「ジャーナル」にその日の気づきや学び等を記入し、提出する。・「ジャーナル」は、講師が読んでコメントを記入した上で、次回に返却する。2.3内容本科目は、1年次(秋学期)を対象に、1回につき4時限180分(土曜日の1・2、3・4時限)の授業を8回行った。1クラスの定員は30名であり、学期前半に3クラス、後半に3クラスの計6クラス(計180名)にて実施した。本科目はどの学部の学生でも受講できる。全体のねらいに基づき、各回の授業のテーマとねらいを決定した(表1)。3結果と考察本科目の心理学的考察は、別報(注1)を参照されたい。本報では本科目から見受けられた学生の成長について論じたい。本科目はすべて土曜日の2コマを使って行われた。当初土曜日の開講は、履修登録者数の少なさや出席者数の減少を危惧する声も聞かれた。しかし、本科目の履修登録者は定員(前半90名、後半90名)を超え、抽選を行い、履修登録の辞退を選択せざるを得ない学生も出た。出席者については、初回登録180名中、1回も出席しなかった者は19名であった。また、全出席者(8回)は76名、7回出席者は45名と、継続的に出席する学生が75.1%(121名/161名)で、6回出席者28名を含めると92.5%(149名/161名)となり、高い出席率であった。出席率(全欠席を含む)は図2と図3の通りである。本科目では、毎回、学生が授業の最後にジャーナルを記述し提出をした。また、全授業終了時に課題を出し、リポートの提出を課した。これらジャーナルとリポートについては現在分析中であるものの、それらから学生が本科目に何を期待し、どのように取り組み、何を見出そうとしていたのかをうかがい知ることができる。実習における他者との協働や対話を通して、自分とは異なる多様な考えや価値観に触れたことを自分の成長として自覚できた学生もいれば、入学後半年を経過した学生が学部学科を越えて他の学生と関わる体験をし、新たな関係づくりを始める場として活かそうとする学生もいた。学生本人のこうした気づきは、他の学生や講師、インタビューをした先生など、他者とのやりとりを通して自分自身について考え、自分自身のことを知る機会を持ったことによるものである。これから社会に出るにあたって、どう生きていこう―45―新たなキャリア教育科目の効果

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