中部大学教育研究11
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1はじめに我が国の製造業や建設業の設計部門では、生産工程のシステム化や新製品の開発期間短縮のために、2次元CAD(ComputerAidedDesign)から3次元CADへの移行が急速に進むとともに、3次元CADデータを用いた強度計算や構造解析(CAE:ComputerAidedEngineering)および加工(CAM:ComputerAidedManufacturing)が積極的に利用され、急激な技術革新が起こっている。しかし、その一方で、3次元CADやその関連技術を十分に理解した技術者が不足していることが問題となっている1)。特に、中部大学(以下、本学という。)が位置する中部地区の産業の中核をなす自動車業界の大多数に導入されている3次元CAD/CAM/CAEのハイエンド統合システム「CATIA」(ダッソー・システムズ社)は、航空機業界、電機業界をはじめ、製造業のほとんどの分野で広く採用されているが、慢性的な技術者不足であり、業界では随時CATIA技術者が求められているのが実状である2)。また、米国では“市販ソフトを活用した学部学生向けの設計演習”が既に常識化しているが、設計技術に関して我が国の企業が海外の企業に勝る水準を保ち続けるためには、大学、特に学部学生を対象とするソフトウェアの運用も含めたCAE教育が非常に重要な役割を果たすものと考えられる。このような現状と本学工学部卒業生の約6割が製造業や建設業に就職することに鑑み、本学工学部では、建学の精神「不言実行、あてになる人間」を信条として、実践的能力を身に付けた“21世紀の社会からあてにされる設計技術者”を育成するために、教育・学習環境の充実を図り、工学部全学科(機械工学科、電気システム工学科、電子情報工学科、都市建設工学科、建築学科、応用化学科、情報工学科)の学生を対象として、きめの細かいCAD/CAM/CAE教育を実施している。2教育環境の整備本学工学部卒業生の約6割が製造業や建設業に就職する。このため、機械工学科、電気システム工学科、電子情報工学科、都市建設工学科、建築学科では、それぞれの専門分野に応じた設計技術者を育成することが必要となる。また情報工学科では、ソフトウェア開発という立場から設計技術に関する基礎知識を身に付けておくことが望まれる。応用化学科は、一見CAD/CAM/CAEとは無縁のように思われるが、本学と縁の深い化学系、繊維系、化学商社系、プラスチック系企業にCAD教育の必要性を尋ねたところ、8割の企業から「学生がCADを使えることは良いことである」との回答を得た。このような状況を考慮して、2007年度に工学部CAD教育施設の設備更新を行い、表1に示す最新のハードウェアとソフトウェアを導入した。AutoCAD(オートデスク社)は製図を中心とした基礎教育用、基本的な数値シミュレーション機能をもつSolidWorks(ソリッドワークス・ジャパン社)はCAD/CAM/CAEへの展開を行う発展教育用、複雑な機械のモデリング、高度な数値シミュレーションおよびCAM機能をもつCATIAはCAD/CAM/CAEの応用教育用に用意されている。また、OrCAD(サイバネットシステム社)は、主に電気電子系学科における回路設計技術の基礎―35―中部大学教育研究№11(2011)35-41計算機支援による実践型設計技術者の育成-中部大学工学部におけるCAD/CAM/CAE教育-岡明彦・佐伯守彦・石鍋雅夫・石井清塩見弘幸・後藤英雄・渡辺健治・細川健治図1工学部CAD教育施設表1工学部CAD教育施設の学習環境

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