中部大学教育研究11
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んでしまったとの理由に挙げられていた。つまり、学生の間では、部署(学部・学科)を超えた社交の場とはなっていないことが伺える。その背景には、学生のコミュニケーション能力不足があると考えられる。この問題の解決には、喫煙問題に留まることなく、導入教育を強化するなどの学生の社交能力を向上させる措置が必要なのかもしれない。4.6禁煙vs喫煙マナーを違反させないような対応我々はこれまでに、一部を除いて喫煙マナーを違反させないようにするための策を講じてきた。しかし、究極的な目標は禁煙である。なぜなら、たばこが喫煙者に加えてその周囲にいる非喫煙者にも生命と健康に大きな影響を及ぼすことは膨大な医学的なデータで実証されている、喫煙者の減少が喫煙マナー違反者の数を絶対的に減らす、たばこ規制枠組み条約で象徴されるように、人間の体と心をたばこから守るための努力が世界中で取り組まれている3)からである。具体的には、喫煙者に対しては、他大学でも試みているように4)、禁煙外来を学内に設置することを提案したい。また、喫煙を開始させないための啓蒙活動の強化も推し進める必要があろう。4.7教職員一体となっての対応を本学では、毎月“キャンパスマナー向上キャンペーン”中の昼休みに、教職員の有志による構内見回りが実施されている。本学の現場における喫煙指導は、主にこれを介して行われているのが現状である。著者達は、喫煙学生が、“この期間のみ喫煙マナーを守れば良い”という認識をしてしまうことを懸念している。従って、どの教職員も何時何処でも、喫煙マナーを守っていない学生に遭遇したら注意を促して欲しいと著者達は願っている。また、それが喫煙マナー違反者を出さない一番の特効薬であると信じている。4.8本研究を介して得られたこと著者らは、本研究を行う以前は喫煙マナーを守らない学生を頭ごなしに注意をしていた。そして、それに対しての反応が鈍い学生もいた。しかし、なぜ喫煙所以外で喫煙をしてしまったのかという質問をすることで、会話が広がったり、より早く反応してくれたりするようになったことを経験した。以下に本研究中に得られた指導過程を紹介する。・まずは、たばこの火を消させるか喫煙所に移動させる。学生が反応するまでその場から離れない。どんなに反抗的な学生であっても最終的には反応してくれる。・喫煙所以外で喫煙してしまった理由を聞く。・最後に、喫煙所以外では喫煙してはいけない旨を伝える。頭ごなしに注意するよりも学生の心に響いている感じがあった。また、注意する側が携帯灰皿を持つというアイデアが採用されている大学もある5)。喫煙所が遠いような場所でのマナー違反者の注意の際には役立つと考えられる。5まとめ●喫煙マナーを違反させなくさせる対応よりも禁煙化が重要である。●雨天時の喫煙マナー違反者を出さない対策として、天候に左右されないような喫煙所の設置が必要である。●喫煙所とそれ以外を明確化するために喫煙所に柵を設けることを提案する。●指定区域以外禁煙である旨を、正門と西門にて改めて学生に伝えるシステム作りを提案する。●導入教育などの強化によって学生の社交性を向上させれば、喫煙所の縮小化に結びつく可能性がある。●医療従事者を養成する健康医療科学部棟に喫煙所がないことに由来する問題の解決のために、所属学生に対して、喫煙ルールの遵守のみならず禁煙指導教育を強力に推し進めるべきである。●キャンパス内喫煙マナー向上のためには本学教職員が一体となった対応が欠かせない。参考文献1)財団法人健康・体力づくり事業財団.スモークフリーをめざす.健康づくり.385(5)、1-7.20102)藤丸郁代、青石恵子、山口知香枝、石井英子.喫煙が及ぼす学生生活および生活習慣への影響.中部大学教育研究.10、123-127.20103)藤原久義他.禁煙ガイドライン.CirculationJournal.69(suppl.IV)、1105-1124.20054)堀田勝幸、戸部和夫.大学における禁煙支援.医学のあゆみ.226(6-7)、489-493.20085)立身政信.学校(大学)における禁煙推進.総合臨床.57(8)、2086-2090。2008(講師生命健康科学部スポーツ保健医療学科)―33―大学生が学内で喫煙マナーを守らない・守れない理由

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