中部大学教育研究11
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が言える。田川(2011)は、大学にとって学生の満足度を高めることの理由を2点挙げている。第1に、受験生の獲得である。在学生の満足度の高さは、受験生に対するアピールにつながるといえよう。第2に、在学生の諸問題の根底に満足度があると想定できる点である。学生の満足度を高めることにより、退学者の減少や、大学全体の活力の向上に結びつくことが予想される。しかしながら、本学においては一部の学部を除き、入学から1年後にかけて全体的な満足度は低下する傾向にあった。もしも、学生の満足度が学生の諸問題にかかわるのであれば、いかにして満足度を高めるかという点に焦点を当てることが必要となる。本研究の結果から示唆されることはいくつかあると考えられる。第1に、不本意入学に対するケアをしっかりと行うことである。不本意入学は、比較的長期間にわたり、満足度を低下させるようである。受験制度上、不本意入学を避けることは困難であるが、何らかの形で対処することが必要となるであろう。第2に、教員のみならず先輩が、悩みの相談相手となるような場を提供することが考えられる。大きな関連がみられたわけではないものの、先輩への悩みの相談は満足度の高さに関連がみられた。教員の職務負担の多さを考えると、学生同士が話しあうことのできる適切な場を設けることも、有効な手段であるように思われる。第3に、充実した学生生活を送るような環境の整備である。大学の中に居場所があることや、楽しみにしている授業があることなど、学生生活を充実させることは、満足度の高さに結びついていると言える。当然ながら、これらの施策を行う際にも、効果の裏づけが必要となる。今後も地道な検討を重ねる中で、学生にとってよりよい環境を提供することを考えることが必要となるであろう。文献見舘好隆・永井正洋・北澤武・上野淳(2008).大学生の学習意欲、大学生活の満足度を規定する要因について日本教育工学会論文誌,32,189-196.小塩真司・願興寺礼子・桐山雅子(2006).2006年度入学生における進学目標・学科選択理由・満足度の学部間比較中部大学教育研究,6,87-92.小塩真司・願興寺礼子・桐山雅子(2008a).中部大学人文学部の新入生における学科選択理由と学科選択満足度中部大学人文学部研究論集,19,53-66.小塩真司・願興寺礼子・桐山雅子(2008b).中部大学新入生の学科選択満足度の分析―入学年度、学部、学科による比較と影響要因の検討―中部大学教育研究,8,7-13.小塩真司・桐山雅子・願興寺礼子(2006).大学新入生における悩みの有無および悩み内容の入学年度による変化学生相談研究,27,138-148.小塩真司・吉住隆弘・佐藤枝里・願興寺礼子・桐山雅子(2010).学科選択満足度に関連する要因-1998年度から2010年度までの新入生の分析-中部大学教育研究,10,47-53.鈴木由美・藤生秀行(1999).女子大生の友人数と自己効力について-大学満足度と過去の友人関係を中心として-日本教育心理学会第41回総会発表論文集,744.田川隆博(2011).学生満足度の分析-名古屋文理大学満足度調査より-名古屋文理大学紀要,81-86.山田剛史(2009).大学生の生活経験と適応意識大学生の学習・生活実態調査報告書研究所報(Bennese教育研究開発センター),51,58-63.准教授人文学部心理学科小塩真司講師学生相談室佐藤枝里教授人文学部心理学科願興寺礼子教授学生相談室桐山雅子―27―大学入学時と1年後の満足度表4充実した大学生活と満足度の関連

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