中部大学教育研究11
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巻頭言自学教育の開発と評価を想う本学は、ここ数年来、大学教育の基本を学士課程教育において、学士課程教育の活性化と改革を進めています。いわゆる新教育改革であり、ここではカリキュラムの改革を中心とした従来型の教育改革の範疇を越え、入学生の安定的な導入や卒業生の就業支援の戦略を、アドミッション戦略やディプロマ戦略として策定し、教育改革に組み込みました。このごろでは常套句となったアドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシーそしてディプロマ・ポリシーの3ポリシーを統合した教育目標の設定であり、社会の期待に対してどう応え、社会に対してどう貢献するか、についての教育実践であります。大学はもともと教育機関であり、次世代の人材育成、人的資源の開発という社会に無くてはならない職務を分担し、このことを大学の社会的な存在の根拠としています。大学の自治とか、教育の自由、教員の教育権等は、あくまでも社会から負託された範囲で成り立つものであり、大学に無条件で与えられた裁量ではないことは確かです。だから、大学の教育制度や教育内容は社会の諸制度の中の一つとしてあるのであり、常に社会の持続的な発展に参加することが基底にあります。このためにも、大学は社会の変化を先取する形で自らを常に改革し、進化し続ける宿命にあるのです。ところで、大学教育がこの期待に応えるためには、時代を読み次世代が活躍する社会状況を想定し構想する確かな能力と態度が求められます。このために大学は、過去や現在の状況を観察・調査し、分析・認識し、点検・評価し、その結果を外挿して未来のあるべき人材養成のための教育のあり方を模索してきました。過去や現在の状況についての分析・認識や点検・評価は観察、測定、調査等と呼ばれる一定の尺度をもって直接的あるいは間接的に計測(Measurement)することで行われてきました。そして、この計測の精緻さ、正確さ、さらに再現性の高さによって、得られた分析・認識や点検・評価の結果は信頼され、より普遍的なものとして社会に受け入れられてきました。しかし、過去や現状についての分析・認識や点検・評価の信頼性がより高く、より一般的であればあるほど、より高い確率で未来を予測させる根拠となるのでしょうか。歴史は間違いなく繰り返すのでしょうか。かつてもてはやされた未来学の発想に捉われるのではなく、持続可能な社会や大学のあり方を想定し、構想し、設計し、実現するためには、この過去外挿に加えて、新たな知的活動を模索する時期に来ているのではないでしょうか。未来社会をより正しく予測し、その社会に必要な人材養成を進めるための教育制度や内容を構想し、実施し、その成果をどう評価し、更なる改善・改革にどう反映させるか。この構想、実施、評価は大学教育を含めたすべての教育活動を成立させるための基本的な研究活動

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