中部大学教育研究11
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も「どちらともいえない」という程度であり、全般的に著しく乏しいことがわかった。これは、職業、臨床心理士等に関する情報が主としてテレビドラマ等、マスコミから得られるもので、入学生自らが職業に関する情報を収集してきていないことを示唆していると考えられ、今後は専門職以外にも幅広い職種についての情報を提供していく必要があると結論された。4.2今後の課題新入生の関心領域、コンピュータに対する態度については、2010年度入学生以外は問題はなかった。2010年度入学生、現時点の2年次生については、入学時の心理学やコンピュータに関する知識が少なかったことが示唆された。しかし、2010年度入学生も初年次教育で様々な領域の心理学の知識やコンピュータの有用性を知ったはずである。今後は、初年次教育を経て2010年度入学生の関心が他の年度の入学生と同様多様化し分散したか否か、各種コンピュータ教育を通じてコンピュータの有用性を認識し積極的にかかわる態度が形成されたか否かを追跡調査する必要がある。希望する進路については、一般企業への就職を望む学生が増えたことは、確かに現実的で堅実な選択ができるようになったという点では望ましい。ただし、一般職に甘んずるだけでなく、臨床心理士や学校心理士、心理職の公務員、企業内での産業カウンセラー等の専門職、企業内で市場調査や実験、統計的検定等の専門知識を活かすことのできる職種を希望する学生も、もっと多くてもよいはずである。こうした専門職に就く希望が減ってしまった原因の1つは、やはり、今回明らかとなった職業知識の乏しさにある可能性がある。今後は、専門職を含めた幅広い職種や可能性についての情報を、3年次、4年次のキャリア教育を充実させていくなどして、これまで以上に十分提供していく必要がある。注1)このアンケートは、新入生の導入教育のための必修のセミナー(旧フレッシュマンゼミA、現スタートアップセミナー)の最初の講義に1回目を(質問紙調査)、半年後の最後の講義で2回目を(Web調査)実施し、両者を比較することで半年間の導入教育の効果を知る手がかりとしてきた。その一部は中部大学人文学部紀要に発表してきたので、ご関心の向きは水野(2003,2004,2005,2006,2008)、水野・松尾(2004)、水野・西口(2003)を参照されたい。2)2009年度と2011年度の入学生の傾向は類似しているが、2010年度の入学生の傾向は2002年度の入学生に近く、臨床心理学に関心が高い入学生が極めて高く、実験系の心理学への関心が著しく低く、2002年度より低くかつ偏ってしまっている。こうした傾向は、臨床心理学以外には、実験系の心理学の名称すら知らない入学生が多かったことを示唆している。この原因としては、2010年に通常よりも著しく多い128名もの入学生があったことが考えられる。例年だと入学してこないはずの数10名の入学生の心理学領域に関する知識は、例年の入学生より低かった可能性は高い。実際、この年度の学生のデータを除外すると、図2からは、一貫した分散傾向が見て取れる。3)図3のHSD検定での下位尺度得点の平均値の差の臨界値は2つの平均値の間にいくつ平均値が存在するかによって異なるため、グラフの見かけの差が検定結果と一致するとは限らない。各臨界値を文中に記入すると煩雑なため、有意だった箇所・有意水準のHSDの差の臨界値を以下の表に示す。4)注3と同じく、図4のHSD検定の平均値の差の臨界値を以下の表に示す。―21―心理学科新入生の10年間の変化

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