中部大学教育研究11
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の職業知識の分析で改めて確認する。それ以外の項目の評定平均値は、評定中央値の3.0から大きく逸脱しておらず、ほぼ中庸と見なすことができる。各項目の10年間の変化を明らかにするために、項目毎に年度を参加者間要因とする1要因分散分析を行った。その結果、年度間に有意差が認められたのは、半数の7項目であった(項目1:F(9,912)=5.29,p<.01;項目2:3.51,p<.01;項目3:3.14,p<.01;項目4:1.54,ns;項目5:4.72,p<.01;項目6:1.14,ns;項目7:1.20,ns;項目8:1.15,ns;項目9:2.48,p<.01;項目10:0.92,ns;項目11:4.75,p<.01;項目12:1.36,ns;項目13:F(7,765)=2.45,p<.05;項目14:1.52,ns)。そこで、有意差のあった項目の評定平均値のみグラフ化し(図4)、図3と同様、HSD下位検定結果を記入した4)。ただし、項目13は下位検定の結果有意に異なる平均対がなく2007年度にやや高かっただけだったため、グラフからは除外した。図4からわかるように、1.認定心理士の取得については、2002年度が顕著に高く、その後徐々に低下して2011年度に最低になっていた。これは、認定心理士の資格の有用性が感じられなくなったというよりもむしろ、認定心理士のように単位取得のみで取得できる資格よりも、認定心理士も資格取得の一部となっている心理学検定での1級資格の方が重んじられるようになってきたためである可能性がある。実際、心理学科でも、2010年度から心理学検定受検者は急激に増加し、57名もの受検者が受験し、半数が2級を取得した。この2級資格は、卒業とともに認定心理士の資格が得られると、1級資格に昇格する。今後は、心理学検定での1級資格の取得希望についても調査していく必要がある。2.大学院での臨床心理士の取得と3.大学院での学校心理士の取得については、両方とも2002年度は最も高かったが、その後徐々に低下し、2011年度が最低となった。9.心理職の公務員の希望については、これら2つほど顕著ではないものの、2002年度から2009年度にかけて緩やかに低下し、その後一定となっている。これらの結果は、以下の項目の分析結果と併せると、資格の取得や公務員になることを希望していないというよりもむしろ、最近の学生が大学院に進学せず大学卒業後すぐに一般企業に就職したいと考えていることを示している可能性が高い。実際、5.大学を卒業・就職希望については、2002年度から徐々に上昇し、2009年にピークに達して以来ほぼ一定である。また、11.一般企業への就職についても、2002年度から著しく上昇し、2009年度でピークとなり、その後ほぼ一定である。これらの結果は、最近の入学生が資格取得、大学院進学、公務員試験への合格等を目指さなくなり、卒業とともに一般企業に就職したいという極めて現実的な希望を抱いていることを端的に示している。文系は理系と異なり、大学院を出て一般企業に就職することは極めて難しい。また、教育・研究職に至っては、国立大学の大学院修了者ですら就職が困難である現状では、就職できる可能性は極めて低い。こうした現状から判断して、この結果は、最近の入学生の向上心がなくなったことを示唆しているというよりもむしろ、現実を見極めた堅実な選択ができるようになったことを示していると考えるべきなのかもしれない。―17―心理学科新入生の10年間の変化表3希望する進路の質問項目と10年間924名(13,14のみ8年間728名)の評定平均値とSD

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