中部大学教育研究11
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の大きな違いであろう。また、このようなシステムが当然となっていることから、イギリスの学生は、自分で卒業研究の問題設定を行い、研究方法や活動のスケジュールを設定していた。日本技術者教育認定機構(JABEE)では、教育システムの評価項目として創成教育(エンジニアリング・デザイン)を重視している。イギリスでは、まさに、卒業研究を創成教育として実施しており、教員の指導のとおりではない、学生主体の研究活動が行われていた。また、このようなイギリスの学生の状況を私の担当する卒業研究生にも見せることで、モチベーションを高め、意識改革をさせたいとも思った。さて、リチャードという優秀な学生が、水路の底面せん断応力を計測する実験を行っており、私はこの学生に対するサポートを行っていた。イギリスでは、人のことをFirstnameで呼ぶ。塩野先生もKOJIであり、私もMAKOTOであった。リチャードから、HEY,MAKOTOと呼ばれ、質問を受けた。計測結果が理論(等流の理論)と合わない。そのとき、水路の勾配として過去の情報1/1000を使っていたが、この値が怪しいので再度計測するように指導した。その結果、水路の勾配が1/1000ではないことが分かった。さらに、別の理論(運動量保存則)を適用して検討するように指導すると、実験結果と理論とが一致した。その後、リチャードは私をPROFESSORと呼ぶようになった。4おわりに3月11日の東日本大震災時には、まだラフバラ大学で過ごしていた。震災のニュースはイギリスでも広く報道され、地震や津波による被害が知らされるとともに、原発の様子が大変大きな関心事であり、非常に危険であるとの報道が一日中流れていた。大学や子供たちの学校、ショップなどで、多くの方から声をかけられ励まされた。日本に帰るときに、仲良くしていた教員が個人的な寄付を渡そうとまでしてくださった。当時、日本人会でも“日本のために何か行動したい”という要望が高まり、3月19日にタウンで募金活動を行った。1日で約45万円にもなり、募金をいくつも経験している方から、“これは記録だよ”とまで言われた。このように、イギリス人はチャリティー精神にあふれ、大変やさしい方々である。東日本大震災は歴史上甚大な災害であり、復旧・復興には国際的なサポートが必要とされるなかで、やさしさを大変うれしく思った。なお、募金をしてもらったお礼として、折り紙(鶴)を渡した。大変好評であり、こういった日本文化の象徴をプレゼントすることは良いことであると思った。本稿の2節では、イギリスの生活や準備のあり様を紹介した。この内容は本冊子にふさわしいか危惧されるが、今後、イギリスに留学する先生方にとって、活用できる情報となれば幸いである。今回、イギリスのラフバラ大学への海外留学という、大変貴重な経験をさせていただいた。今後、この経験を生かして私の研究をどのように発展させるか、精一杯努力するつもりである。また、この場をお借りして、私の渡英を認めて頂いた先生方、および種々のサポートをいただいた中部大学工学部都市建設工学科の教職員の皆様に謝意を表します。参考文献1)LoughboroughUniversity:http://www.lboro.ac.uk/2)日本人会ホームページLifeinLoughborough:http://loughborough.blog103.fc2.com/3)LENAP:http://www.leics.gov.uk/index/education/going_to_school/emtas/emass_students_pupils(准教授工学部都市建設工学科)―122―武田誠図5著者(右)とリチャード

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