中部大学教育研究11
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1はじめに著者は、平成22年8月1日~平成23年3月28日までイギリスのラフバラ大学1)で、海外研修員として過ごした。ここでは、当時を振り返りながら、イギリスの生活事情・大学事情を紹介したい。ラフバラは、ロンドンから北に向かって電車で約90分の距離の、レスター州のなかにある人口約6万人の小さな町である。ラフバラから南に位置するレスターシティーは、サッカーの阿部勇樹選手が移籍したクラブチームがあることでも知られ、北に位置するノッティンガムはロビンフットが活躍した場所として有名である。ラフバラ大学は学生数約2万人と大きく、学期が始まる前後で町の様子が変わり、ラフバラは大学の街という印象が強い。ラフバラ大学はスポーツ科学と流体力学、建築・土木工学が有名であり、私の留学時にも、スポーツ学部に日本から3名の教員が留学していた。また、ラフバラ大学は2012年に開催されるロンドンオリンピックの日本キャンプ地に指定されており、新聞紙上でも、キャンプ村建設に伴う駅前の再開発などが記されていた。イギリスは植民地を多く持っていたためか、発展途上国に対する関心が高い。ラフバラ大学にも、発展途上国の諸問題を扱う研究グループがあり、その中に日本人の学生がいた。彼は国連で働きたいという夢を持って、エチオピアなどの貧しい国の農村の水事情について研究していた。単身イギリスに渡り、大きな夢を持って活動する彼を誇らしく思うと共に、海外で頑張っている先輩(日本人)がいることを、本学の学生にも伝えたいと思った。2イギリスでの生活について2.1大学の選択理由ラフバラ大学でお世話になった塩野先生は、河川工学の大家であり、特に河川の乱流構造の把握やモデル化に関する造詣が深い。河川流の解析解を示すSKMを開発したり、コンピュータによる3次元解析モデルを展開したりと様々な研究業績を有している、世界的にも有名な先生である。なお、日本からイギリスに渡る多くの研究者が、塩野先生の下でお世話になったり、先生の紹介で他大学に行くなどしている。塩野先生とは国際会議で顔を合わせていたが、直接の面識はなかった。しかし、塩野先生の人柄は聞いていたし、私の研究(氾濫解析や水理・水質解析)に塩野先生が開発されている乱流モデルを組み込みたいという狙いがあり、ご友人である名古屋工業大学の冨永先生にお願いして、塩野先生の研究室にお世話になった。渡英したのは平成22年8月であるが、その年の4月にラフバラ大学と関西大学との協定のために塩野先生が日本に滞在していた。ちょうど、アイルランドの火山の噴火によって、飛行機の運航ができなくなったときであり、ホテルでの足止めを余儀なくされていた塩野先生を本学にお招きし、当時の工学部長岩田先生、副工学部長松尾先生と会談することができたのは思いがけない喜びだった。2.2イギリスでの生活の準備イギリスへの留学が決まり、後藤副学長から渡英のためのビザ取得に時間がかかるので、早急に済ませた方が良いというアドバイスをいただいた。留学期間が8月から翌年の3月であったので、「いちばん良い時期を外したんだね」というお言葉もいただいた。ラフバラに着いた8月は野イチゴの終わりの時期であり、公園一面にある野イチゴを思いっきり食べるという体験ができなかったことは、非常に心残りである。さて、5月の連休明けからビザ取得の準備を行い、無事に取得できた。その後に取り掛かったのが、家族の健康保―119―中部大学教育研究№11(2011)119-122《海外便り》イギリスのラフバラ大学での活動報告武田誠図1ラフバラの位置(googleマップに加筆)

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