中部大学教育研究11
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は50人~60人程度となっている。また、シラバスに掲載した講義の趣旨は「多様な評価方法の概要を理解し、目的に応じた評価方法の選択および評価情報の解釈に関する基礎的な知識を習得する。教育場面において用いられる評価方法を概観し、教育評価に関する理解を深める。特に評価方法の多様性や評価の目標と手段の関係について事例を紹介しながら解説し、教育目標に対応した評価方法の選択や評価結果の解釈のあり方に対する態度を形成することを目的とする」である。講義では教育評価に対する理解を深める目的で演習や実習を行い、これまでの経験の振り返りや体験を通した気づきを促している。こうした演習や実習に用いる教材は、できるだけ学生の身近なものを選択している。また、大学新入生に対して重要となることを意識的に取り入れるようにしている。各回の具体的な内容、および使用した教材については次節以降で述べる。2.2演習・実習の内容と目的評価の目的を教材としたジグソー学習(第2回)指導過程における評価の項目を解説した後、「小テスト」「定期試験」「実力試験」「大学入試」の4つの試験の評価の目的について、全員をいずれか1つに割り当てて考えさせた。その後、試験ごとに集まり意見交換を行った。10人~15人の大きなグループとなるが、すでに話す内容を考えているため、全員が最低1度は発言することとなる。この後のセッションで他のグループの学生に説明することは教示してあるため、積極的に良い意見を取り入れようとする姿勢がうかがえる。次に、各試験から1人ずつ集めた4人1組のグループを編成し、自分の試験の評価の目的についてまとめた内容を他の学生に説明させた。グループ編成はランダムとし、その場で振り分けた。その際、「小テスト」に割り当てた学生を呼び出し、同じグループの学生はその学生の下に集まるよう指示した。そして、最後に全体でのまとめを行い、グループごとの説明内容のズレの調整を行っている。講義開始2週目での実施であるため、グループの成員どうしは初めて話す学生の方が多い。また、積極的にかかわることが求められる活動であるため、早く終わったグループでは、そのまま話が盛り上がることも少なくない。クラス内の交流を促進しているため、クラスの雰囲気づくりの実習として機能している。小テスト(第3回)テストで使用される問題形式を紹介するために、解説する問題形式の問題で構成された小テストを実施した。小テストは予告なしで実施したため、学生は緊張していたが、成績には含めないことを強調し安心させた。また、問題も講義内容とは無関係な一般常識問題を使用した。ルーブリックの作成とモデレーション(第4回)パフォーマンス評価の1つであるルーブリックによる評価方法について解説した後、ルーブリック作成の実習として、各自「あいさつ」の評価基準(S、A、B、C、Eの5段階)を作成させた。次に、教師役・学生役をそれぞれ指名し、自身が作成した評価基準にもとづいて実際のあいさつのロールプレイを行った。指名されなかった学生は自身の作成したルーブリックに従って評価を行い、挙手によって全員の評価を確認した。学生役の学生に対する指示は、その学生が作成した評価基準の中から教員が指定した評価に対応するあいさつをすることであった。Aの評価のあいさつを実施するよう指示しても、学生役のあいさつに対する全体の評価を確認するとS~BあるいはCの評価とする学生もおり、評価にばらつきがみられることがほとんどであった。Blackboardの利用(第5回・第6回)本講義では定期試験の問題を学生が作成した問題から出題することとしている。問題投稿にはLMS(LearningManagementSystem)であるBlackboardを利用した。学生はBlackboardを利用するのは初めてであるため、第5回の講義ではシステムのチュートリアル(Blackboardへのログイン、およびアセスメント機能、ディスカッション機能の利用)を実施した。続く第6回の講義において、ディスカッション機能を利用した問題作成と投稿を実施した。まず、問題投稿についての諸注意を行った後、各自問題の作成・投稿に取りかからせた。最低1問は投稿するよう指示し、平均2問程になる問題数が投稿された時点で、他の学生が投稿した問題に解答を返信するよう指示した。講義時間の終わりには、講義後の投稿も受け付けることと、自身が作成した問題に対して正解を投稿しておくよう指示した。中間試験とフィードバック(第7回)中間試験を実施時間30分、30点満点で実施した。試験開始前に、試験受験に関する諸注意(学生証の提示、カンニングの扱い等)を行った。学生証の提示まで求める講義中の試験は大学に入学してから初めてであるため、学生は大学で試験を受ける姿勢について学ぶことになる。解答を早く終えた学生には問題用紙に解答を転記しておくよう指示し、試験後ただちに答え合わせを行った。残りの時間ではフィードバックに関する講義を行い、自身の試験結果および試験に対する取り組みにつ―114―太田伸幸

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