中部大学教育研究11
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<臨床実習>2年生の評価実習前におけるグループでの実習体験が導入として良かった。文章を書くことが苦手だったが指導を受け自信がついた。分からないことがあった場合はまず自分で文献を調べて実習に臨んだ。実習で学んだ事は,考える力がついた,文章を書く能力が身についた,評価の考え方を知った事であり,それが現在の臨床に役立っていると語った。<後輩へのアドバイス>学生時代は知識を身につけることも大切であるが,考える力を身につけることが重要であり,授業や実習では動作分析を勉強しておくことが重要と語った。4考察とまとめ質的研究は現象に関しての先行研究の蓄積が少なく,変数が把握されていないときに用いられる研究手法であり,理学療法分野においても自立した理学療法士が獲得すべき能力についての質的研究3)などが行われている。質的研究の研究方法はその性質上多様であるが,現在の主な方法には,現象学,エスノグラフィー,グラウンデッドセオリーの3つがあげられる。本研究では,グラウンデッドセオリーを用い,まず臨床実習の成果と職場適応との関連があると思われた2例を抽出した。対象Aは実習で学ぶべき人間関係の形成や,臨床能力について十分に獲得できていなかった。しかし,今回の振り返りによって実習の問題点に気づき,それが就職後の人間関係や臨床での対応につながっていたと振り返ることができた。一方,対象Bは実習について前向きに振り返り,またそれが現在の職場で役立っていると語った。順序よく臨床に必要な知識や心構えを身につけることができたおかげで良好に職場適応ができたと考えられる。今回の2例の比較により,職場適応には①良好な人間関係を形成するためのコミュニケーション能力,②臨床における問題解決能力が重要であることが改めて分かった。さらに学生時代の臨床実習に対する姿勢や実習内容は卒業後の職場適応に影響する可能性があることが考えられ,改めて臨床実習教育の重要性を感じた。本研究で行った面談により,対象者が卒後の適切な時期に学生時代を振り返ることで卒前教育改善の糸口が得られた。さらに新人にとっては「語り」により課題に気づき,自身の育成の手がかりとなることが示唆された。今後は,今回得られた内容を踏まえて調査・分析を進め,臨床適応力や臨床実習のあり方についての検討を行っていきたい。参考文献1)臨床実習教育の手引き第5版,日本理学療法士協会,20072)戈木クレイグヒル滋子:グラウンデッド・セオリー・アプローチ,p27-41,新曜社,20063)芳野純他:自立した理学療法士が獲得すべき能力に関する質的研究,理学療法学37(6):410-416,20104)米澤久幸他:臨床適応力を高めるカリキュラムと臨床実習のあり方研究,中部大学生命健康科学研究所紀要,Vol.6,20105)キャロル・ガービッチ:保健医療職のための質的研究入門,医学書院,2003講師医療技術実習センター矢澤浩成教授生命健康科学部理学療法学科米澤久幸講師医療技術実習センター宮本靖義講師生命健康科学部臨床工学科武田明講師生命健康科学部臨床工学科福田信吾国立病院機構東尾張病院藤部百代―112―矢澤浩成・米澤久幸・宮本靖義・武田明・福田信吾・藤部百代

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