中部大学教育研究11
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1はじめに理学療法養成課程を卒業した新人が,臨床に適応していく過程は,医療の進歩,社会の変遷とともに努力を要するものになっている。理学療法士の養成課程は学内教育と臨床実習教育とに大別され,臨床実習教育は具体的な環境と対象にあたりながら,学内で習得した知識や技術,医療専門職としての態度を含む総合的な実践力を養う場である1)。したがって新人が臨床現場へ適応していくために臨床実習教育が重要な要素であることは言うまでもない。そこで本研究では,臨床適応力を高めるカリキュラムおよび臨床実習のあり方を検討することを目的として,問題探索型の質的研究を行った。今回は研究概要を紹介し,臨床実習の成果と職場適応との間に関連があると思われた典型例を抽出し,考察を加えて報告する。2方法2.1対象対象は2008年3月に同一の理学療法養成校を卒業し,臨床経験が2年目の理学療法士10名とした。対象者には研究の主旨を理解した上で,協力することを承諾し同意書に署名してもらった。職場は総合病院,老人保健施設など施設類型にとらわれないものとした。本研究は中部大学生命健康科学部倫理審査会の承認を得て実施した。2.2調査方法図1に研究の流れを示す。まず同意が得られた対象者に対して聞き取り調査を行った。調査時間は約60分間とした。聞き取りは人権に関する質問や誘導する質問等はさけ,調査後も内容の取り扱いについて対象者の承諾を得た部分のみ使用した。内容の均一化を図るため,全対象者への聞き取り調査は同一人物が行った。調査は半構造化形式とし,対象者と聞き取り者との間にラポールを形成してから面談を進めた。主な調査内容としては,現在の職場状況,学生時代の臨床実習についての感想,学生時代に必要だと思うこと,臨床実習に必要だと思うこと,とした(表1)。面談内容はICレコーダにて記録し,面談後にICレコーダの内容を文章として書き起こした。図1研究の流れ表1調査内容2.3分析方法分析はグラウンデッドセオリーに基づいて行った。グラウンデッドセオリーは,インタビューや観察などによって得られた具体的なデータをもとに,そのデータを圧縮し理論を発見すること,あるいは既存理論の精緻化を目指す方法である2)。グラウンデッドセオリーの分析方法に準じて複数名で断片化,コード化(表2),図式化(図2.3)を行った。―109―中部大学教育研究№11(2011)109-112臨床実習から職場適応への連続性の検討-卒後1年目の理学療法士の振り返りから-矢澤浩成・米澤久幸・宮本靖義・武田明・福田信吾・藤部百代

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