中部大学教育研究11
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プに分けて演習を行った。その結果、1人の教員・授業補助者が指導する平均学生数は、2010年度は8.9名であったのに対して2011年度は5.8名であった。学生1人当たりの平均演習時間は、2010年度は30.6分であったのに対して2011年度は37.4分であった。5考察5.12011年度演習の授業評価について2011年度の授業評価では、総得点が中得点領域であったことから、学生は中程度の平均的な演習であったと評価していることがわかった。しかし、高得点領域に近い得点であったことから、学生の満足度が比較的高く、津田ら2)が指摘する複数教員による指導体制による学生の混乱は生じていないと考えられる。各下位尺度においては、いずれの項目も中得点領域であった。このことから、時間配分と内容、意義・目的の伝達と指導・アドバイス、教材の活用・工夫、デモンストレーション、学生間交流、学生・演習への態度・対応の面において、学生の感じている評価は平均的であり、授業の内容・方法について教育上の問題はないと考えられる。下位尺度Ⅰの「時間配分と内容の難易度」については、中得点領域ではあったが高得点領域に近い得点であった。これは、2011年度の授業形態の変更により少人数制の演習授業の実現が可能となり、学生にとって時間配分や内容の満足度につながったと考える。今後は、授業内容や指導の充実と少人数制の実施により、さらに学生の満足度を高めて高得点領域となるよう努力する必要がある。5.2授業評価得点の比較について2010年度および2011年度の総得点は中得点領域であったが、2011年度のほうが有意に高かった。各下位項目の比較でも、すべての項目について2011年度の方が有意に高かった。このことから、2010年度の学生に比べて2011年度の学生は、演習授業の質を高く評価していたといえる。これは、学生数の増加に伴う解決策のひとつとして行われた授業形態の変更が考えられる。この試みにより、2011年度は1グループの平均学生数および1人の教員・授業補助者に対する平均学生数が2010年度より減少した。また、1人当たりの平均演習時間は、2010度より長くなっている。つまり、学生が満足感を持ち、質のよい演習授業としてとらえている要因として、1人の教員が指導する学生数が多すぎず、十分な説明や助言を得ることができたこと考えられる。さらに、1人当たりの演習時間が長くなり、十分な演習時間が確保されていることも要因として考えられる。津田ら2)の研究では、学生が感じた演習授業で教員の指導のよかったことについて「学生の理解が深まる指導」「学生の学習や喜びや意欲がわく指導」「教員が存在することへの学生の安心感」を見出している。教員1人当たりの学生数が多いと、こうした指導は困難である。また、十分な演習時間の確保がなされなければ、教員はただ手順や注意事項を教えるだけになってしまい、学生の理解の深まりや意欲向上には及ばない。今回は教員への負担は否めないが、学生1人あたりの演習時間も増えたことから学生の満足につながり、授業評価が向上したと考えられる。教員と授業補助者の総得点の比較では、両者に有意な差はなかった。また、各下位尺度における教員と授業補助者の得点には有意な差はなかった。これは、下位尺度Ⅰ~Ⅲは授業全体の流れや講義の内容自体が影響した可能性が考えられる。そのほか、技術指導の手順や配分時間、指導上の要点があらかじめ周知されており、教員も授業補助者も十分認識して指導に当たったものと考える。このことから、対象学生数は増大したが、授業形態を工夫することで、2011年度も学生に対して演習の質が保証できたと考える。6今後にむけて成人看護学演習における2011年度授業評価と2010年度との比較より、少人数制の技術教育を行うことができる環境を整えることで学生は良い授業であったと評価していたと考えられる。したがって、今後も可能な限り少人数制で実施することが望ましいといえる。そのためには授業補助者の導入は不可欠である。今後は授業補助者の演習に参加した教育体験を明らかにすることで、教育と臨床の実践的連携について検討していきたい。参考文献1)宮芝智子,舟島なをみ,野本百合子:看護学演習における授業活動の解明,看護教育学研究,14(1),9-22,2005.2)津田右子,西沢三代子,柴田京子他:基礎看護技術演習に関わった10人の教員への学生評価からの指導評価,看護学統合研究,8(1),10-18,2006.3)高柳久美,笠井直美:臨床看護師と学内演習を構築していく際の有効な方法について,第39回日本―107―成人看護学演習における授業補助者導入による指導方法の評価2表3成人看護学演習の指導体制

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