中部大学教育研究11
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1はじめに看護基礎教育は、看護学の専門的知識・技術を習得し、看護専門職の資格を得るための教育である。看護学を教授する教員は、講義・演習・実習という異なる授業形態の教授活動を通して、学生の体系的な知識の獲得、看護実践のための技術や態度の習得を支援する1)。本学科の成人看護学演習の授業は、臨地における汎用性の高い看護技術の習得を目的に、学内において模擬患者を設定して行っている。学生への技術教育の質保証のため、少人数制で効果的に看護技術を教育できるよう、2009年度より臨地実習施設からの看護職者を「授業補助者」として招き、グル―プでの技術指導を教員と分担して実施している。津田ら2)は、複数の教員が演習授業に入ることにより、言語的表現や説明方法の違い、指導方法の違い等が学生の不安感や不満足感につながる可能性を示唆している。そこで、成人看護学演習では、こうした課題に対して教員間で授業前にミーティングを設け、授業担当者から授業の目的・目標・スケジュールを含めた方法を周知することを徹底している。さらに、過去の演習における学生の動向などを踏まえて、指導内容も共有している。また、臨地の看護職者が学内演習の一部を担当するにあたり、様々な困難があるという報告もあるが3)、これを克服するための成人看護学演習での取り組みを資料1に示した。研究者らは2010年度、こうした取り組みを行った授業に対して、舟島ら4)の開発した「授業過程評価スケール-看護技術演習用-」(以下、授業過程評価スケールとする)の文言を本学の演習で評価しやすいように文言の一部を修正し、評価を行った(資料2,3)。修正に際しては原文の意味内容を変えないよう研究者間で検討を行っており、内的整合性は確認できている。その結果、2010年度の成人看護学演習に対する学生評価は中得点領域であり、平均的な演習であると評価された。また、教員と授業補助者の得点比較では、有意な差は認められなかった5)。この結果から、授業補助者導入に対する取り組みは教育上、問題はなく、教員と授業補助者で格差のない指導が行えていたと評価できる。残された課題は、総得点およびすべての下位尺度において高得点領域に位置していなかったことである。これは、学生は演習に概ね満足しているものの、教育活動を見直し改善する余地のあることを意味している。2011年度は学生の満足度をさらに高めることが必要であったが、対象学生数が137名と多く、従来の授業形態のままでは授業の質の低下と、それにともなう学生の授業への満足度の低下が懸念された。そのため、授業形態を変更して授業評価を行った。そこで本研究では、2011年度の授業評価を知ること、2011年度と2010年度の評価の比較を行い、より良い授―103―中部大学教育研究№11(2011)103-108成人看護学演習における授業補助者導入による指導方法の評価2-2010年度と2011年度の比較より-江尻晴美・近藤暁子・堀井直子・中山奈津紀・梅田奈歩荒川尚子・大谷かがり・杉田豊子・松田麗子・牧野典子資料1成人看護学演習における授業補助者に対する取り組み

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