中部大学教育研究11
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めた。この尺度の総合得点は最低40から最高160点であり、総合得点が高い程、自己教育力が高いことを示している。3)自己管理能力高橋ら9)が作成した自己管理スキル尺度を用いた。この尺度は、Rosenbaumのセルフ・コントロール・スケジュール、過去の社会的スキルに関する研究、ライフスキルに関する健康教育上の目標例などを参考に作成され、「何かしようとするときには、十分に情報収集をする」、「難しいことをするときに、できないかもしれないと考えてしまう」など自己管理スキルに関する10項目で構成されている。これらの質問に対して、「自己教育力」と同様に4件法で回答を求めた。この尺度の総合得点は最低10点から最高40点であり、総合得点が高い程、自己管理能力が高いことを示している。3.4分析方法初回授業時と最終授業時における自己教育力および自己管理能力の総得点と各項目の比較検討を行った。さらに、自己教育力と自己管理能力の総得点が高かった順に高群、中群、低群の3群に分け同様に比較検討を行った。また、自己教育力については、「Ⅰ.成長・発展への志向」、「Ⅱ.自己の対象化と統制」、「Ⅲ.学習の技能と基盤」、「Ⅳ.自信・プライド・安定性」の4側面での比較も行った。前後比較にはWilcoxonの符号付順位検定を行い、5%未満を統計的に有意とした。統計分析にはSPSSVer.15を用いた。3.5倫理的配慮調査表を配布するにあたり対象学生に対して、研究の目的、個人情報の保護、自由意志による参加、回答拒否により不利益は生じないこと、調査表は無記名であり、得られたデータは統計的処理を行うため個人が特定されないこと、データは研究目的以外には使用せず、研究終了後に破棄すること等を文書と口頭で説明し、調査表への回答によって同意を得たものとした。なお、本研究を実施するにあたり本学倫理審査委員会の承認を得た(承認番号220007)。4結果4.1対象者の基本属性調査表の回収数は初回授業時114名、最終授業時110名であった。その内、携帯番号の下4桁が前後で一致しており、欠損値がない84名を分析の対象とした。性別は、男性12名(14.3%)、女性70名(83.3%)、未記入2名(2.4%)であった。年齢は、18歳~30歳、平均18.3±1.7歳であった。4.2自己教育力1)スタートアップセミナー前後の総得点・因子別得点比較(表1)自己教育力総得点は、セミナー前後において有意差は認められなかった。一方、因子別総得点では、「Ⅲ.学習の技能と基盤(p<0.005)」において有意差を認めた。その他の因子、「Ⅰ.成長・発展への志向」、「Ⅱ.自己の対象化と統制」、「Ⅳ.自信・プライド・安定性」については有意差を認めなかった。2)項目別比較(表2)項目別比較において有意に上がった項目は、「1.将来、他の人から尊敬される人間になりたい(p<0.000)」、「2.自分の調べたいことがある時に図書館(室)を利用している(p<0.003)」、「14.考えを深めたり、ひろげたりするのに話し合いや討議を大切にしている(p<0.002)」、「31.生まれ変わるとしたら、やはり今の自分に生まれたい(p<0.006)」、「28.疲れているときは何もしたくない(p<0.04)」、「26.自己評価するときには、自分の目標に照らしておこなっている(p<0.048)」であった。逆に有意に下がった項目は、「33.ぼんやりと何も考えずに過ごしてしまうことが多い(p<0.009)」であった。有意に上がっ―96―山口直己・堀井直子・牧野典子・城憲秀・杉田豊子・足立はるゑ表1自己教育力総得点と因子別総合得点の比較

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