2015世界に羽ばたいた中部大生
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8いどまさはる青年海外協力隊員(JOCV)井戸正治さん中部工業大学工学部建築学科1982年3月卒業活動した国と期間:ケニア共和国中央州ニエリ市1987年12月~1990年12月職種:建築所属先:公共事業省中央州本局建築課活動中の想い出:私は学生時代は英語が苦手で海外経験もなく、協力隊募集のポスターを見たことはありましたが全く関心はありませんでした。しかし、卒業後に設計事務所に勤務するうちに外の世界で自分を試したいという動機から、協力隊に参加しました。ケニア着任直後に先輩隊員がアレンジしてくれた田舎の農家でのホームステイ研修で、電気や水道がない泥の壁に藁ぶきの家での生活で、自分のこれまでの生活や考えの甘さを痛感させられました。勤務地に赴任してからは同僚やその家族、町の人達と積極的に交流をしてケニアの人々を理解するように努めました。3年間の活動の中で途上国の人達と一緒に働くことが好きになり、帰国後は日本の民間会社や国際機関のコンサルタント、シニア協力隊、シニアボランティアを経て、現在の開発コンサルタントへとODA(政府開発援助)活動を継続しています。在学生へのエール:私は在学中に英語LL授業の選抜試験に不合格、卒業後の一級建築士受験も2度不合格、協力隊受験も2度失敗しています。試験に落ちた直後は自分に対する自信が全く持てませんでしたが、目標を定めて少しずつでも前進し、希望を形にしてきました。ケニア協力隊時代に同僚とビールを飲みながら冗談を言い合っている時に、「おまえはいつのまにか英語がうまくなったなあ」と言われた言葉が今でも私の中に深く残っています。今はその人達のためになるODA事業に携わっていることが大きな喜びです。皆さんも思い切って外に飛び出して行ってください。道を切り開いていくのは自分自身です。高校の体育館新築工事現場での職場の技術者との打合せケニア着任直後のホームステイ先(電気も水道もない)の家族と共に仕事の後に同僚達とケニア産ビール「TUSKER(象牙)」でKANPAI!!いどまさはるシニア海外ボランティア(SV)井戸正治さん中部工業大学工学部建築学科1982年3月卒業活動した国と期間:ブータン王国ティンプー市2002年10月~2004年10月職種:建築所属先:労働人材省本庁プロジェクト実施課活動中の想い出:JOCV帰国後はコンサルタント会社でODA案件の経験を積み、ブータンでも施工監理で6ヵ月間滞在しました。コンサルタントになって10年以上が経って先の進路に迷いがあった頃、SVでブータンでの建築の職種の募集を偶然見つけました。その頃双子の娘たちはまだ出産前でしたが、退職して参加しました。SVでは、職業訓練校を各地に展開する建設工事の設計・監理の指導を配属先の技術者に行いました。当時のブータンは住んでいた首都でも物が不足しており、娘たちのミルクや紙おむつの購入など家族には大変な思いをさせましたが、今でもブータンでの生活が懐かしいと言ってくれています。在学生へのエール:JOCV帰国後にコンサルタント会社に入社したのは、ケニアで一緒に活動して先に帰国した隊員が誘ってくれたおかげでした。SVの募集要項を見たのも、その時の上司が退職してSVに応募すると聞いたからでした。ブータンでも活動する中でいろいろな人に出会い、その後の進路のきっかけとなりました。現在のコンサルタント会社に入ったのも、20数年ぶりに会ったケニア隊員時代の友人の誘いがあったからです。何かを始めようとすれば、必ず影響する人に出会い、進むべき道を見つけることができます。自分の直感を信じ、小さなことからでも目標を定め、迷わず進んで行ってください。刈入れ時期の棚田標高が南のインド国境の100mから北のチベット国境の7500mまでの厳しい環境が作り出す地形美。労働力となる若者がインターネットやスマホの普及により都市へ流出し、地方の過疎化による棚田崩壊の問題も起きてきている。山奥の小学校の給食風景学校で出る給食は、雑穀米と揚げた干し魚に砂糖もミルクも入っていない紅茶。それでも我先にと食器を差し出す姿に、ブータンの将来を担っていくパワーを感じる。ブータン様式建築(この家は既に廃屋)1階が版築壁の家畜小屋、2階が木造木舞壁の住居。台所はなく部屋の中で調理を行った残飯を1階に落として家畜の餌とし、冬は1階の家畜小屋から出る熱が2階の暖房の助けとなる。屋根は置き屋根で、2階の天井床との間の空間に冬期のために穀物や肉を乾燥保存する。家畜との共生と自然を利用したエコロジー建築。谷あいの村落一番奥に高く見える寺院を中心とし、谷側に広がっている村落。住宅の2階の壁に白く見えるところが漆喰塗りの木舞壁。屋根は昔は天然スレート版だが、伝統職人の減少のために現在では簡易なトタン屋根に代わってきている(写真の銀色に光っている屋根がトタン)。皆さんも是非一度ブータンを訪れてください。日本の昔の自然や生活、人の良さが残っている国です。きっと好きになります。

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