GLOCAL_Vol19
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6法を知らない。旅行の費用や、日本のどこへ旅行するべきかなども不明な点が多い。本研究が、訪日観光ブランドの宣伝や観光資源の共有、訪日観光情報の発信の一助になればと考える。 他方で、訪日観光の現状を分析し、中日双方の政府と関連観光企業に参考となる情報を提供し、彼らがターゲットを絞った業務を展開しやすくすることで、内モンゴルにおいて増大する観光需要を満足させ、内モンゴルの観光客市場を着実に開発したい 。参考文献赤堀浩一郎・髙井典子(2014)『訪日観光の教科書』、創成社自治体国際化協会(2008)『地方都市への中国人訪日観光客の誘致について』澁谷鎮明ほか(2015)「台湾からの訪日客の観光スタイルに関する一考察」易風 vol.10、pp147-159張兵(2016)『訪日中国人から見た中国と日本』日本僑報社日本政府観光局(2010)『JNTO国際観光白書 : 世界と日本の国際観光交流の動向』国際観光サービスセンター村山慶輔(2015)『訪日外国人観光ビジネス入門講座』翔泳社はじめに 内モンゴル自治区は近来経済発展し、人民の生活水準は向上し余暇が増大している、そのため、海外への観光旅行をする人々が多く見られるようになった。特に中国の新しい休日制度改革の推進に伴い、長い休みが減り、短い連休が増えている。そのため多くの人々が、距離が近く、文化の差が大きくない日本観光に関心を持ち、訪日旅行を選択するものと思われる。研究目的 本研究では、中国周縁地域からの訪日観光の現状を明らかにする。中国からの訪日観光客は日本における観光学的研究でも注目されている。しかし、中国の地方ごとの訪日観光の状況は十分に調べられていない。そこで中国の地方都市など「周縁地域」からの訪日観光の状況について研究したい。具体的には訪日客の規模と変化、日本観光イメージ、訪日時の観光行動などを明らかにしたい。この際に「周縁地域」の事例として、内モンゴル自治区を研究対象地域とする。 2019年の中国の海外旅行先は4時間以内で行くことのできる国が中国人観光客の最も人気のある選択肢となっている。逆に、2019年の訪日客数は中国が20%でトップを占め、次いで韓国が14%、米国が11%となっている。研究方法 本研究では、研究テーマに関する既往の研究や各種資料を分析しつつも、訪日観光経験者へのインタビューを利用して内モンゴル自治区居住者の訪日旅行の姿を明らかにする。 分析の際には、内モンゴル自治区の訪日旅行と上海・北京など訪日観光先進地域との比較対照から、その特性や地域差を見出す。  筆者によるインタビュー調査の一例を挙げて、訪日観光の特性の一端を示してみたい。内モンゴル自治区オルドス市在住で、一昨年訪日観光を行ったAさんは、20代の女性で大学生である。彼女は、2名の個人旅行で日本に訪れている。旅行の手配は、自身がネット予約で航空券やホテルを予約している。なお日程は9泊10日なので、韓国など近隣国からの個人旅行客(2-3泊)よりもかなり長い。 彼女らの旅行日程を見ると、東京と大阪だけを訪れ、大阪から入国している。またその行動をみると、各地でのショッピングが非常に多い。しかも事前に店の情報をかなり調べ、その上で必要な場所を訪れている。研究意義 訪日観光は単なる観光ではなく、内モンゴルと日本の人文・経済交流を促進するものであると考える。内モンゴル自治区の経済成長に伴い、多くの人が海外旅行に興味を持ち始めた。日本も人気の観光地となっているが、情報が少なく、多くの人が日本への旅行の方中国周縁地域からの訪日観光に関する研究―内モンゴル自治区を事例として国際人間学研究科 国際関係学専攻 博士前期課程1年呼春(HU Chun)1996年中国内モンゴル自治区オルドス市生まれ。内モンゴル大学蒙古歴史系ツーリズム専攻卒業。中部大学大学院国際人間学研究科国際関係専攻博士前期課程在学中。専門は観光学。現在、中国周縁地域からの訪日観光について研究している。

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